周木律 『アールダーの方舟』
アールダーの方舟/周木 律

¥1,944
Amazon.co.jp
聖なる山の調査隊を襲う謎の連続死。これは神の怒りか、奇跡の完全犯罪か。「痛みの山」と呼ばれるトルコのアララト山で、ノアの方舟の遺物を探す調査隊に次々と不可解な死が降りかかる。その謎に挑むのは、「一度記憶したことを決して忘れることができない」放浪の天才学者、一石豊という男。メフィスト賞受賞で注目の新鋭が、宗教学・科学・建築学の叡智を駆使して、壮大なスケールで人類の謎に挑む、超弩級の歴史ミステリー。(Amazonより)
デビュー作である『眼球堂の殺人』が個人的にはイマイチだったのでもう手に取ることはないかと思っていた作家だけど、今回はあらすじに惹かれて読んでみた。
語り手の女性アリス(日本人です)は、一度記憶したことを忘れることができないという学者、一石豊とその他面々と共に、ノアの方舟があるというアララト山に登ることとなった。
様々な宗教や価値観を持つ登山隊一向を待っていたのは、案の定殺人事件。
そこへノアの方舟の謎や宗教談義が絡んでくる。
驚いたのは、全体の半分以上が、一石が語る宗教談義に費やされること。
この男、クールなくせによく喋る。
アリスがちょいと質問などしようものなら、延々と何ページにも渡って宗教や神についての薀蓄や自説を披露しまくるのである。
普通なら退屈になるところも、一石(というか著者)はなかなかわかりやすく説明してくれるので、これが勉強になる。
キリスト教、イスラム教、ユダヤ教、それらについての知識を述べ、しかし本人は「神などいない」「宗教は人を殺す」的なことをきっぱりと、徹底的なまでに論理的に言い放つのだ。
最終的に語られるノアの方舟の解釈もなかなかのものだったけど、とにかくこの宗教談義がメインなのでここを面白いと思えないと辛いかもしれない。
とはいえ今までなんとなくしか把握していなかったこれらの宗教についての話は興味深かった。
神を信じず宗教を糾弾する一石の、各宗教の誤謬を突く発言が多いので、それらの宗教を持つ人はこれを読んだらどう思うだろうか。
相変わらず会話文がわざとらしくて下手な演劇を見ているようではあったけど、デビュー作よりはずっと面白かったです。傑作。
アールダーの方舟/周木 律

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聖なる山の調査隊を襲う謎の連続死。これは神の怒りか、奇跡の完全犯罪か。「痛みの山」と呼ばれるトルコのアララト山で、ノアの方舟の遺物を探す調査隊に次々と不可解な死が降りかかる。その謎に挑むのは、「一度記憶したことを決して忘れることができない」放浪の天才学者、一石豊という男。メフィスト賞受賞で注目の新鋭が、宗教学・科学・建築学の叡智を駆使して、壮大なスケールで人類の謎に挑む、超弩級の歴史ミステリー。(Amazonより)
デビュー作である『眼球堂の殺人』が個人的にはイマイチだったのでもう手に取ることはないかと思っていた作家だけど、今回はあらすじに惹かれて読んでみた。
語り手の女性アリス(日本人です)は、一度記憶したことを忘れることができないという学者、一石豊とその他面々と共に、ノアの方舟があるというアララト山に登ることとなった。
様々な宗教や価値観を持つ登山隊一向を待っていたのは、案の定殺人事件。
そこへノアの方舟の謎や宗教談義が絡んでくる。
驚いたのは、全体の半分以上が、一石が語る宗教談義に費やされること。
この男、クールなくせによく喋る。
アリスがちょいと質問などしようものなら、延々と何ページにも渡って宗教や神についての薀蓄や自説を披露しまくるのである。
普通なら退屈になるところも、一石(というか著者)はなかなかわかりやすく説明してくれるので、これが勉強になる。
キリスト教、イスラム教、ユダヤ教、それらについての知識を述べ、しかし本人は「神などいない」「宗教は人を殺す」的なことをきっぱりと、徹底的なまでに論理的に言い放つのだ。
最終的に語られるノアの方舟の解釈もなかなかのものだったけど、とにかくこの宗教談義がメインなのでここを面白いと思えないと辛いかもしれない。
とはいえ今までなんとなくしか把握していなかったこれらの宗教についての話は興味深かった。
神を信じず宗教を糾弾する一石の、各宗教の誤謬を突く発言が多いので、それらの宗教を持つ人はこれを読んだらどう思うだろうか。
相変わらず会話文がわざとらしくて下手な演劇を見ているようではあったけど、デビュー作よりはずっと面白かったです。傑作。