皆川博子 『死の泉』


死の泉 (ハヤカワ文庫JA)/皆川 博子

¥1,166
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第二次大戦下のドイツ。私生児をみごもりナチの施設「レーベンスボルン」の産院に身をおくマルガレーテは、不老不死を研究し芸術を偏愛する医師クラウスの求婚を承諾した。が、激化する戦火のなか、次第に狂気をおびていくクラウスの言動に怯えながら、やがて、この世の地獄を見ることに…。双頭の去勢歌手、古城に眠る名画、人体実験など、さまざまな題材が織りなす美と悪と愛の黙示録。吉川英治文学賞受賞の奇跡の大作。(Amazonより)





皆川博子の代表作と言っていい本書。


その評判の高さと重厚さに尻込みしてたけど、ついに読んでみた。凄かった。



もっと耽美な雰囲気なのかと思いきや、戦時中の悲劇だからか、悲哀の色合いが強い。


なによりも、全編を通して、背徳の狂信者クラウスの存在感がすごい。


人間的には最低の奴で、まったく好きにはなれない。
しかし芸術や至高の歌声を求めるその姿勢は、どこか読者を惹きつけずにはおれないところがある。



最後のミステリ的な仕掛けについては、正直十全に理解したとは言い難く、素直に終わったほうがよかったのではと思わなくもない。


しかし、これのおかげで読者はさらに幻惑の彼方へと連れ去られるのは間違いないだろう。


もっと深くその意味を読み取れれば、さらに評価は上がるのかもしれない。




なんていうか、どう感想を書けばいいのかわからないくらい、重厚で長大な物語でした。









余談ですが、不老不死を研究しているクラウス……と言われると思わず反応してしまう繭期←