フィリップ・K・ディック 『宇宙の眼』


宇宙の眼 ハヤカワ文庫SF/フィリップ・K・ディック

¥994
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観測台から見下ろしていた見学者たちを、突然の災厄が襲った。陽子ビーム加速器が暴走し、60億ヴォルトの陽子ビームが無秩序に放射され、一瞬で観測台を焼き尽くしたのだ! たまたまその場にいた8人は、台が消滅したためにチェンバーの床へと投げ出された。やがて見学者のひとり、ジャック・ハミルトンは、病院で意識を取り戻す。だがその世界は、彼の知る現実世界とは、ほんの少し違っていた……鬼才の幻の名品登場!(Amazonより)




《銀背》ことハヤカワSFシリーズや、世界SF全集、版元を移し創元文庫から『虚空の眼』と改題され出版されるも絶版になって久しい頃に、ようやくハヤカワSF文庫として復刊された本書。(タイトルも初期のものに戻った)



陽子ビーム加速器の暴走によって、パラレルワールドに迷い込んでしまった8人。


どうやらそこは、8人のうちの“誰か”にとってとても住み心地がいい世界らしい。


どういうことかというと、その人物が望むように世界が変わるのだ。


気に入らないものや人は、簡単に消してしまえる。


その秘密を知った一向(世界の主を除く)はどうにかして元の世界へ戻ろうと奮闘し、やがてまた違うパラレルな世界にやってくる。


さて次は誰のどんな世界なのか……。



という感じで、8人それぞれが「世界はこうあるべきだ」と思う世界に行ったり抜け出したり、が物語の中心となる。


大抵みんな極端だったり危険な思想/思考の持ち主なので、そんな奴が望む世界はごめんこうむる。


しかしやっと抜け出したと思ったらまた違う人のパラレルワールド。
一体いつになったら本当の現実に還れるのでしょう……。





面白いかと聞かれれば、うーん……普通。


ディック作品ではわりと名前が知られてる作品だけど、期待したほどではなかった。


初期の作品なので、のちの傑作のようなメランコリックさや現実崩壊感が薄く、どこか狂騒的な雰囲気。


多元宇宙テーマの先駆けとしては評価したいが、もはやこのネタは色んな作品で使い古されているので新鮮さはない。



『ユービック』とかと比べちゃいけないんだろうけど、個人的には中期~後期の作品が好きだと気付いた読書でした。