野﨑まど 『2』


2 (メディアワークス文庫)/野崎 まど

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2。


ふざけているわけではない。これがタイトルだ。


に。



中身はもっと凄い。


第一期野﨑まどの集大成と呼ぶに相応しく、メディアワークス文庫でこれまでに刊行された作品のメインキャラが一堂に介する、まさにオールスター総出演。


なので、できれば本書を読む前に『[映]アムリタ』→『舞面真面とお面の女』→『死なない生徒殺人事件』→『小説家のつくり方』→『パーフェクトフレンド』を読んでおいたほうがより楽しめると思う。(特に一番最初のやつは必読)


これらはどれも「軽く読めて笑えるのに衝撃」という凄いことをやってのけている傑作たち。


しかしその集大成たる『2』はそれらを超えてくる。易々と。




物語は、主人公の数多一人が、超有名劇団《パンドラ》の入団テストを受けるところから始まる。


もうこのパートだけでも凄まじい。
超劇団《パンドラ》はそれこそ異能の如き演劇の集団で、十数人いた入団希望者たちは己の非力さを否が応にも痛感し、仲間たちはひとりまたひとりと去っていく。


まぁ主人公がここで辞めたら文字通りお話にならないので、醜態を晒しながらも賢明に喰らいつき、どうにかこうにか役者として《パンドラ》の一員になることが許された。さあここからがスタートだ。



しかし始まったばかりの役者人生は、《パンドラ》の突然の“解散”という形であっけなく幕を閉じる。


それは、オーディションに遅れてやってきた「とある人物」の出現によるものだった。


“完璧な演技”を披露しただけでパンドラの劇団員たちを絶望させた彼女は、主人公に問う。


「映画に出ませんか?」


こうして主人公は、彼女と二人だけで『2』という映画を作ることとなった。





これがほんのプロローグ。


ここから、ある目的のために作られる映画の制作過程が語られていく。


その映画の目的。それは……。



ああダメだ言えない。


ひとつ言えるのは、想像も及ばない、人智を超えたアレを……。




あとは読んでのお楽しみ。


野﨑まどはついに、人間を超えたとんでもない地平に到達してしまった。




ジャンル分け不能の超絶エンターテインメント。


これを読まない手はない。