小川一水 『天冥の標4 機械じかけの子息たち』


天冥の標Ⅳ: 機械じかけの子息たち (ハヤカワ文庫JA)/小川 一水

¥929
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「わたくしたち市民は、次代の社会をになうべき同胞が、社会の一員として敬愛され、かつ、良い環境のなかで心身ともに健やかに成長することをねがうものです。麗しかれかし。潔かるべし」―純潔と遵法が唱和する。「人を守りなさい、人に従いなさい、人から生きる許しを得なさい。そして性愛の奉仕をもって人に喜ばれなさい」―かつて大師父は仰せられた。そして少年が目覚めたとき、すべては始まる。シリーズ第4巻。(Amazonより)




小川一水の大河SFシリーズ第四巻。


一巻で提示された宇宙の各勢力のなかから、今回は《恋人たち(ラバーズ)》の話。


時は2300年代前半。
前作『アウレーリア一統』から数年後の世界で、冥王斑保持者である《救世軍(プラクティス)》の少年が目覚めると、そこにいたのはまぁそこそこ可愛い女の子。


どうやら自分は事故にあって大怪我をし、彼女はそれを介抱してくれてるらしい。


やがて起き上がれるようになると、ああなんだか無性に彼女とセックスがしたい。彼女もどうやらその気らしい。


というわけで、本編の冒頭でいきなり詳細な官能描写が始まる。



そう、《恋人たち(ラバーズ)》は、人類に性愛をもって奉仕するよう、偉大なる大師父に作られたアンドロイドなのであった。




《救世軍》の少年キリアンと、《恋人たち》の少女アウローラ。


アウローラはキリアンを満足させるべく、ありとあらゆる手段、シーン、やり方でもってして、性愛の奉仕を捧げる。


エロい。とにかくエロい。
あまりにそれが続くので、だんだんエロさも感じなくなってくるほどに。



そうまでしてキリアンを満足させたいその目的は。キリアンの正体は。そしてそれを邪魔する謎の影。


これ単体でも、まさかの官能SFとして楽しめるけど、やはり気になるのはシリーズの繋がり。


一巻(四巻より未来の話)で出てきた《恋人たち》の長、ラゴス。


この四巻でもラゴスという名の《恋人たち》が出てくるが、一巻のラゴスとはちょっと雰囲気が違う。


それも最後まで読めば納得。ああなるほどそれで……。



もちろんあいつも出てきます。宇宙を駆ける傍観者、非展開体のダダー。



まだ大きな動きはないものの、急展開するという六巻に向けて、徐々に世界観が構築されていく。



次巻はダダー(ノルルスカイン)の誕生秘話ということで、これまた興味深い。




いま一番面白いSFシリーズ。


未読なら、まずは一巻『メニー・メニー・シープ』からどうぞ。