恩田陸 『木洩れ日に泳ぐ魚』


木洩れ日に泳ぐ魚 (文春文庫)/恩田 陸

¥637
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舞台は、アパートの一室。別々の道を歩むことが決まった男女が最後の夜を徹し語り合う。初夏の風、木々の匂い、大きな柱時計、そしてあの男の後ろ姿―共有した過去の風景に少しずつ違和感が混じり始める。濃密な心理戦の果て、朝の光とともに訪れる真実とは。不思議な胸騒ぎと解放感が満ちる傑作長編。(Amazonより)




あらすじにあるように、舞台となるのは引っ越し準備が完了してガランとしたアパートの一室。


明日の朝になればそれぞれの道へ別れる男女2人は、最後の夜に“あの日の出来事”への決着を試みた。



あの日、ハイキングの途中で転落死した男。


もしかしてあれは、彼が/彼女が殺したのではないか……。


互いの疑心が形を取り、少しずつ真実へと向かっていく。





恩田陸の本領発揮とでもいうべき回想の殺人。


この著者でなければ物語にすらならなそうな題材を、一夜の秘密の出来事として見事に描き切っている。


各章(番号)ごとの引きがハンパじゃないのもさすが。
次の展開が気になって、ページをめくる手が止まりません。



この不穏な気配と絶妙な語り口こそが恩田陸の真骨頂。


楽しませてもらいました。