「死について、どう思う?」


冷たいフローリングに寝そべった君がゆっくりと呟いた。

それはあまりにも突然で、眼はブラウン管を見たままだったので自分に向けられたものなのかどうか分からない。

僕は黙ったまま君を見つめる事にした。


「ねぇ、どう思う。」


相変わらず眼はブラウン管を見てはいたけど今度はちゃんと僕に向けられた質問だと分かった。

その表情からは何を考えているかはまったく分からなかったが。


ふと、テーブルの脇に置かれた本に気がついた。

ああ、そうか。

君は単純だから、すぐに感化されやすいんだ。


「死について・・・。」


無残に置かれた本を手にとってニ、三ページ読んでみた。

返事が返ってこないのにいらだったのか君が此方を向いてああ、と呟いた。


「その本ね、ちょっと読んですぐやめた。

 だってあまりにも報われない。」


誰が、とは聞かなかった。

読んでいた本を奪われて、君と見つめあう形になる。


「わしはね、生きたいと思わない。

 むしろ死んでいく人たちを羨ましくさえ思う。」


冷たい手がそっと僕の頬に触れた。

視界の端で、白い包帯がゆらゆら揺れる。
端をつかみ包帯をほどいていくと青白い手首に何本もの赤い線が目に付いた。

それはとても艶かしく、引き込まれるようだった。

爪を立てて肉を抉ると、赤い君の涙が流れた。


「ねぇ、一緒に死んであげようか?」


君が笑った。