きえないで、ひととき

キミといられるこの時よ


時は戦争

郵便受けに赤札が一枚入っていた

それがどういう意味を表しているのかを僕はよく知っている

母は泣いていたけれど、僕は声もかけられずに君の家に向かった。

汗だくで連絡もなしにイキナリ引き戸を開けた僕にキミはいつもの様に笑って出迎えてくれた。

今にも凪ぎ出しそうだったのに君の笑顔に一緒に笑った

あぁ、やっぱり好きだなってあらためて感じてしまったのは

ボクが弱いからかな

ボク達はいつものように他愛のない話をした

あたりが暗くなるまで時間を忘れて

このひとときが消えないで欲しいと

笑いながら泣いた

ついには泣くだけになってしまったボクをキミは困った人って笑いながらぎゅっと抱きしめてくれた

その腕があまりにも温かくてたまらなくなった

ボクは結局キミに本当に言いたかったことを言えなかった

別れるときボクはキミに「バイバイ」ではなく「さようなら」と敬礼をしながらいった

もう会えないということを覚悟していたから

入隊した頃以来に君に敬礼をした

あの頃の君は嬉しそうに笑ってくれたけど、今はほとんど泣いていた

無理に笑顔を作りながらか細い声で「さようなら」と君は手を振ってくれた

その姿に今度はボクがキミをそっと抱きしめた

消えないでひと時 そう願いながら


きえないでひととき 叶うならばそう