究極の罰当たり行為(第三話)
まさかこんな孤独な仕事とは思ってもみず頼みの見回りの男も返って来ない。途方に暮れた彼は良い手段も思い浮かばないままとりあえず雨の中駅に向かって歩き出した。ふと道端を見ると木で作られた茶色いものが建っていた。何気なく中に目をやると石で作られた小さいお地蔵さんが奉られていた。その瞬間彼の目は一点に集中した。なんとお地蔵さんの前に小銭が置いてあるではないか!冷静に数えて見ると100円玉が1枚、50円玉が2枚、10円玉が3枚であった。彼は心の中で葛藤した。(どう考えても誰かが賽銭のつもりで置いたんやろな・・さすがにこれをパクんのは・・いやけどもうどうしょうもないやろ・・)時間にして1分も経たない間に善意ある者の賽銭はある一人の愚か者の交通費へと変わったのである。後日H君は私にしみじみこう語った。
「俺間違っても天国にはいけんやろな・・」
究極の罰当たり行為(第二話)
目的地に着き言われた所に向かうとなにやらでかい看板を持った男が立っていた。その男はH君が声を掛けると「とりあえず今日の17時までこれ持ってて。17時過ぎたらあそこの小屋に返しといて。」男が指を差す方を見ると確かに小屋としか言えないようなぼろい建物があった。「ご飯は適当に食べて。あと途中で見回りに来るから。」聞きたいことが山ほどあるH君をよそに男は言いたい事だけ言って去っていった。渋々プラカードを持ちその場に立ち始めたH君、しかしお客さんはおろか通行人もまったく通らない。(ほんまにモデルルームなんかやってんのか?)疑心暗鬼になり始めた彼に更なる不幸が襲う。なんと雨が降り出したのだ。無論傘など持ってるわけもなくかといって買う金もない彼は辺りを見回したが雨宿りできそうな所が一つも無い。しかしここから余り離れると見回りが来た時に言い訳ができない。思い悩んだ挙句H君はプラカードを傘代わりにした。こうなるともはや案内でも何でもない、ただ雨の中板で雨を凌いでいる痛い奴である。空腹と雨に耐える事数時間、ようやく17時になり辺りを見渡したが以前として人っ子一人通らない。見回りの男もあれから一度も現れない。疲れ切った体を引きずり言われた通り小屋にプラカードを戻しに行くH君。とここで大変な事を思い出す。
(俺帰れへんやん!)(つづく)
究極の罰当たり行為(第一話)
格差社会だと言われ始めたこの国日本。みなさんは日々自信を持って生きていますか?上を見れば きりが無く横を見れば自信を無くす・・そんな時は下を見るのもいいじゃないか。世の中にはこんなだめな奴らもいるんだぜ。ネガティブだなんて言っちゃいけない、それでもみんな生きている。
~第一話 究極の罰当たり行為(H君の場合)~
勝手にもう時効だと仮定した上で話を進めたいと思う。数年前になるが、その頃H君は東京で暮らしていた。暮らしていたとか言うと聞こえはいいが付き合ってた彼女が東京で一人暮らしを始めたのでそこに転がり込んだだけのいわゆるヒモ状態だった(しかも家賃は向こうの親)。彼女がせっせとコンビ二で働く中、毎日好きなだけ寝て好きなときに起きると言った自堕落な生活を送っていたH君。さすがにこのままでではいけないと思った彼は日払いのバイトをする事にした。派遣会社に登録し早速入った仕事はモデルルームの案内のプラカード持ちという退屈そうな匂いがぷんぷん漂うものだった。仕事の当日、出発前財布の中身を確認した所持金が220円しかない事に気づき彼女に借りようとしたのだが間の悪い事に前日かなり激しい口喧嘩をしてしまいふて腐れた彼女から返ってきた言葉は「歩いていけば?」であった。彼の住んでいる所から現場までは歩けばゆうに2時間はかかる距離でそれ以前に東京にさほど詳しくない彼には行き方などさっぱり分からなかった。「もうええわ!」捨て台詞とともに勢いよく外に飛び出したH君はとりあえず最寄の駅に向かい目的地の駅を探した。すると何という偶然か目的地までの電車賃が220円だったのである。彼は考えた。(とりあえず向こう行ったら今日一緒に働く奴が何人かおるやろ。そいつらに今度会う時返す言うたら220円くらい借りれるやろ・・)文字どおり見切り発車で電車に乗り込んだH君。(つづく)
