第三章・形勢逆転。


見方が変わったその夜、再び夢を見た。

――――――――――――
…数日後。


週末や他店でのお仕事を挟み、久し振りに彼と仕事する日が来た。

未だ誰からも彼を押し倒してセクハラした事等を聞かないので、誰にも話していないのだろうか?

だとしたら…どうして?

疑問が脳裏をよぎる。


その日は病院が早く終わったし、残っている仕事も無いのでパートさん達が薬歴を書き終えたら私も帰ろう…と店頭の整頓をしながら待つことにした。

程なくしてパートさん達が仕事を終え、帰る後ろ姿を見送り、世津名は掃除する際ロッカーの扉にかけておいた白衣をハンガーにかけ直してロッカーに戻し、帰る用意を始めたその時だった。


「世津名さん、ちょっと良いですか?」

彼に呼ばれた。
解らない事でもあったかな?と何の意識も無く向かった。

「見た事無いファイルがあるんです。開けない方が良いですか?」

彼がパソコン画面を指しながら問う。

「えっ?どれですか?」

画面を見ようとパソコンに近付いたその瞬間、肩を掴まれてカウンターの空いたスペースに押し倒された。

「…痛っ。何?」

「今日は襲わせません。先日世津名さんが僕にしてくれた事、返してあげます。気持ち良い事されっぱなしも悪いですし。」


いつもと変わらない口調。だが、今までには見たことの無い意地悪な笑顔を浮かべる彼。


「何言ってるの?えっ!?や、ちょっと…。」


迂闊だった。

カウンターにあるパソコンは薬歴を書くだけ。余程の事が無い限りファイルを保存しない筈なのに、普通に返事をしてしまった。

仕返しのチャンスを狙ってたんだわ。
やっぱり…私のした事、怒ってたんだ。

カウンターに自分の上半身が乗っかっている状態で降りようにも脚が浮いている為足場が解らない。
また、頚も浮いているので下がってくると痛い。
さらに下手に動けば、パソコン画面やキーボードを落として傷付けて壊したり、角にぶつけてケガする可能性がある。


どうしよう…。

この状況に焦りを隠せない世津名の上衣とインナーに着ていた黒いキャミソールを捲り上げ、露になったブラジャー越しに彼が胸を触る。

「実は前から触ってみたいと思ってたんですよね。」

素朴な疑問なのか意地悪なのか、その言葉に世津名は複雑な気持ちになった。
やがて布越しに感触が違う部分を見つけ責め始める。

「…っあ。」

自分でも判る位変な声を出した。指一本擦めるだけでも、ジリジリと快感が走り始めた。
慌てて空いている右の手の平で口を塞いだ。そんな私の顔を覗きこむ様に聞いてきた。

「気持ち良いんですか?」

「…や、違っ。頚が下がって痛いから起きたいんだけど。」

「じゃ、腕を僕の首に回して起きて下さい。」


必死で羞恥心を誤魔化しながら、上体を起こすことを許して貰えたのも束の間、同時にブラジャーのホックが外された。

「…!」

心の中ではもっと悲鳴を上げているのだが、思ったよりも抵抗していないリアクションになってしまった。

「…腕離さないで下さい。移動しますよ。」

端から見たら体調が悪いのを介抱されている様だが、とにかく見られない事に必死でしがみつく。
動いた先は先日彼を捩じ伏せた待合室。放り投げる事こそされなかったが、押し倒された姿勢は変わらなかった。


「世津名さん、まさか僕に組み敷かれるとは思ってませんでしたか?」


今度は上着をブラごと捲られ、直に胸に触れる。抵抗しようと首に回していた腕を肩へ持っていく。

…が、世津名の腕は、彼の肩を押し返す事をしなかった。

長くて綺麗…と普段は何の気なしに思っていた指に弄られている事に、鼓動が高鳴り、受け入れモードに換わってしまったのだ。
やがて彼の唇が近付いたのは、胸の一番高い所にある、少し前から刺激によって固くなり始めていた部分。右側は指で挟みながら、左側を舌で転がしたり吸い付いてみたりする。
脊髄反射で背筋にゾクッと鋭い快感が走った。


「…っはぁ、んっ!んぅ…。」

最早嫌がる声では無かったが、彼の肩が下へ動いた為に自由になった手で、『負けたくない…。』と残っていた一欠片の理性で、なおも口を塞いて気持ち良いのを我慢する。


その様子を見た彼は、私の手を退け、


「誰にも言いませんから、声、我慢しないで下さい。」

と耳元で囁いて、更に上半身に刺激を送る。


「あっ…や、ダメ、そんな…しないで…っ!」


女性は聴覚で快感を得るとか聞いた事があったが、それは本当らしい。
抗う事を放棄して喘いて堕ちていく。やがてお腹の方でズクズクする感覚が襲う。


「はぁ…っ。」


荒い息遣いをしながら、両腿を擦り寄せ始めている姿に気付き、彼が穏やかに、でもはっきりと聞いた。


「世津名さん、感じてるんですか?腰、動いてますよ。」


「…!やだっ、違う…。」

動向を見透かされてもなお頑に意地を張り顔を背けるが、その表情に煽られたらしい。


「…じゃあ、触ってみても良いですよね?」


意地悪な言葉と同時に、下半身に纏っていた衣類を、ショーツを残して剥ぎ取り下腹部に手指を這わせて反応を伺ってくる。

仕事の時でさえ自分の方を『見つめないで。』と思っているのに、はしたなく求めている自分を見られている。しかもコンプレックスだらけの下半身を晒して。

「嫌だ…見ないで…。」


左手首で両目を覆い、右手は彼の左の胸元へ、押し退けるには力が足りないのが判っていながらも持っていく。


彼にとっては、ここまでは想定内の反応だったらしく、世津名が本当に恥ずかしい思いをするのは、まだここからと言うことはまだ、知る由も無かった。



第四章へ続きます。
第二章・変化。



次の日。


世津名が早番、あの人は遅番だった。
患者さんが来始めていたので、何事も無かったかの様にいつも通りに挨拶を交わし、再びレセコンの元へ戻っていった。


患者さんに集中している時間以外は、彼が昨夜の事を誰かにバラすだろうか…と様子を見ながら仕事をしていたが、話す様子も無い。
また、忙しくて意識が向いていないのか目すら合わないまま1日が過ぎ、再び夜がやってきた。


「世津名さんまだ残りますか?」
「此処だけ片付けたいので…鍵は掛けますから、先に上がって下さい。」
彼に背を向けたまま、棚に置かれている複数の段ボールの中身を確認し断捨離しながら返事をする。

「…。」
言葉も足音も聞こえない事に疑問を抱いて、
「…何?帰らないの?気を遣わなくて良いですよ。」と作業を止めて振り返った時、彼は、私を憐れむ様な視線でこちらを見ていた。

…何よ。昨日の事、気にしてるのかしら?責めるなら責めれば良いじゃない。私は逃げも隠れもしないのに。

けれど、何も言おうとしないその姿に、また苛立ちを覚えた。

「もしかして、昨日みたいな事されるの期待してたわけ?…じゃあしてあげましょうか。」
声を荒げて彼に近付き腕を引っ張りバランスを崩した所に覆い被さる様にして、服を剥ぎ上半身を露にさせ、先日と同じ様に胸板や鎖骨に指や唇を這わせる。



彼の吐く息が荒くなり、感じている表情を見た。それまで優越感を満たそうとしていた気持ちを砕く様に、心臓が…ドクン!と大きな鼓動を打った。


昨日とは違う感覚だった。
…何この感じ?あの子を打ち負かしたいが故の行為の筈でしょ?愛とか…そんなんじゃない!


「…世津名さん?」
一瞬手が止まった私を見透かしたのか掠れた声で問い掛けられた。

「…何でも無い。うるさいわね。」
ポニーテールを揺らして首を振って我に返り、屹立した彼自身を口にした。


…違う、ちがう、チガウ!この子に情なんて向けてない!


無心になろうとしていたのだろうか、力づくでイカせてしまおうと足掻く。


「…っ!」
世津名のポニーテールに指を絡めながら達した彼を見届け、溜め息を一つついて彼に背を向けた。


…どうしたんだろう私?


勝った筈なのに、何で昨日みたいな征服欲が満たされないの?


遠い目をして自問自答していると、ふっと柔らかく消えそうな微笑みを向けながら、彼の方が声をかけてきた。いつの間にか服装は整え終わっていた。

「世津名さん…もう遅いから帰りましょうか。」

時計は9時を少し回っていた。

…やめてよ。
何であんな事した私にそんな声を掛けるのよ?同情してるの?
そんな気持ちを悟られたのかは解らないが、何事も無かったかの様にまた鍵をかけて別れた。

――――――――――――
2日連続で彼を襲った夢を見た後に、職場でトラブルが起きた。
お薬を渡してから約1ヶ月してから発覚した調剤過誤だった。

ドクターから確認と説明を求められたが、私では対処が難しい。彼とパートさんしかいない。薬局長もYさんも居ないし…あの子で大丈夫?

そんな心配をよそに、電話を渡した彼の対処が上手だった。患者さんは勿論、ドクターへの連絡もしっかりとしていた。
その後、彼が過誤に関する報告書を記載していた時、別件のレポートで困っていた世津名に気付き、丁寧に教えてくれた事にビックリした。
報告書が完成した時、周りの視点として事務員である世津名の目線を取り入れるようになった事に成長を感じて、実は…彼が凄く努力していた事に気付かされたのだった。


この後見た夢で世津名の気持ちに変化が出始める。



第三章へ続く。
こんにちは。


先週から飲み会もあり、飲み過ぎビールの世津名です。今日から休肝日しなくちゃガーン

先日お話していた『落ちたキッカケはエロ妄想キスマーク』をかつてのエル○ィーンの小説投稿コーナー風にお送りしたいと思いますガーン
分割してる&更新は未定ですが、徐々に書いております。
昨年の年賀状のデジ絵以来の創作活動(笑)なので、気合い空回り気味かもしれませんが宜しくお願いしますガーン




※このお話は世津名の見た夢を元に構築したフィクションです。
実際には彼(いつも話しているあの人)に対して第一章・第二章における逆セクハラ及び、第三章以降における性行為はしておりませんので『1つのTL小話妄想』と捉えて頂きたく思います。
※文章力が無いガーン&規制に抵触する為、性描写をなるべくオブラートに包んでいる為、R-15レベルですが、閲覧は自己責任でお願い致しますm(__)m


タイトルは予告通り、


『エロから始まる。』



第一章・八つ当たり


あの人への見方が変わったのは、ある夜の夢と、その後の彼の仕事ぶりだった。

いつも通りの仕事場の光景の夢。

彼が、他のスタッフには優しくするけど、私だけは傷付けても赦されると思い、平気な顔されてる事に相変わらずイラッとしていた。
夜、薬歴を書き終えたパートさんを見送り、店舗の鍵を私が持たなければならなかった為、彼の作業待ちしながらデスク周りを片付けていた。

「世津名さん、終わりました。帰りましょうか?」
と、暫くして後ろから声を掛けられた。
普段の私なら、
「わかりました、お疲れ様です。」
と笑顔で言える筈なのに、この時沸き上がったのは怒りや羞恥・嫉妬といった負の感情でしかなく、笑顔を向けた彼に何故かムカついた。

「…。」
彼に背を向けたまま、何も応えない私。


「…?世津名さん?」
「…ちょっと。」


彼の右腕を引っ張り待合室の椅子へ突き飛ばし、彼に乗っかる姿勢でネクタイとカッターシャツを強引に剥いだ。
彼の方が細身で私の方がどう見ても重たい(←悲しい事に。)ので、上になってしまえば逃げられないと考えたのだろう。

「世津名さん…何をするんですか?」

少し震えた声で問う彼の首筋に唇を、胸に手を這わせる。
キスなんて、してやんないから!と妙な意地だけ張り、最早逆セクハラの域だと判っていながら触れ続けた。

「…っ、止めて下さい。」
吐く息が感じてるのが明らかなのに、言葉で抵抗してきた事にまたイライラした。
唇を離し、上半身を起こさせた後彼の顔を睨み付け、やはり逃げられないように右腕を肩に回し、左手を彼の『男性』を顕す部分へ落として探るように触れた。

…固く、してるじゃん。
何よ…普段から『セックスなんてしません。汚らわしい。』って顔して。

今だって『世津名さんって汚らわしいシラー』って思ってる癖に、突き飛ばしてでも逃げないんだから本能には逆らえないんじゃん。

「…こんな風にしてて、止めてって無いと思う…下げれない。少し腰上げて。」襲っておいて逆ギレ気味に言い放ち、肩にかけてた右腕を離してパンツと下衣をずらし、一番隠したい部分を露にして直接触れた。

「あ…。」
彼の表情が羞恥に染まる。私が見たかった顔そのものだった。併せて、固さや熱さを感じた事に征服感を味わい、手で弄んだり唇や舌で責め続けた。

普通なら、好きでもない女にこんな事をされているなら振り払う筈。
最早彼は、快感に敗けていたのか、両腕は自由なのに突き放す事をしないのだから。

「っ…は、離れて下さい。もう…。」

達しそう…なのだろう。
口だけを離し冷たく

「…出せば?」

それだけ返し、再び元の姿勢に戻る。

「…!」

彼が快感の結果吐き出した物を、受け止め呑み込んだが、味わいもせず冷たい視線を向けた。彼もまた、虚ろながら冷たい視線で私を見返した。


彼が着衣を整え直し帰る準備をする横で、

「この事、バラしたければバラせば良いわ。でも…嫌なら逃げれば良いのに、逃げずに貴方が快楽に溺れたのも事実ですけどね。」

『勝った』という感情が優位に立ったのか余裕の笑みで言い放ち、身なりを整え終えた彼を店の鍵をかけるため外へ送り、何事も無かったかのように、

「鍵かけますよ。お疲れ様でした。」

と言って、各々の車へ別れ帰宅した。


第二章へ続きます。