こんばんは


たくさんのかたにご訪問いただき光栄です


今夜は 過去にここに記したおとぎばなしでコメントをもっとも多くいただいた作品を再投稿させていただきます


なにか伝われば幸いです



では はじまり はじまり・・・



数百年も昔
何も悪いことはしていなかったが
魔女の娘ということで
魔女狩りの者たちの呪文によって
下半身を木の根にされて
深い森の中に封じ込められていたメドゥーサ



メドゥーサは
森の中に入り込んでくる
狩人を惑わして
その魂を奪い
数百年も命を永らえてきた



あるとき
森に出掛けて帰ってこない狩人のエリックを
探しに来た恋人のミッシェル



狩人のエリックは
数日前に
メドゥーサによって
魂を奪われ石にされていた


愛するエリックを想うあまり
危険をかえりみることなく
恐怖心などみじんも感じずに
森に足を踏み入れてきたミッシェル


この何百年
森の中に若い娘が
入り込んでくることはなかった


若い娘の魂を生贄(いけにえ)にすれば
魔女狩りの呪文は解けて
メドゥーサは人間になれるのだった
ミッシェルが森に入り込んだことを
察知したメドゥーサは色めきたった


ざわめく森の中
メドゥーサの妖気がメラメラと膨張して
ゴーゴーと小刻みに地鳴りがしている
動物達はおびえて右往左往し
突然掻き曇った空を見上げる


真昼なのに真っ暗になった森の中を
彷徨い歩くミッシェル
恋人のエリックの手がかりを探し歩いて
森の奥へ奥へと
それはメドゥーサに近づいていくことだった
メドゥーサの目が暗がりで金色に光って
地鳴りがさらに大きく響き渡った


「よく来たな 娘」



「だれ!? だれなの!?」



「我れの名はメドゥーサ。
 おまえが来るのを 何百年も待っていた」



「何百年!? 人間ではないの!?」





「メドゥーサは 魔女の子供。なにも悪いことをしていないのに
 魔女狩りの者たちにこのような醜い姿にされてしまった」



「私をどうしようというの!?」



「おまえを生贄(いけにえ)にするのだ。
 そしてメドゥーサは 人間になる」



「もしかして私の恋人 狩人のエリックは生贄にされたの?」



「この森に入り込む人間は メドゥーサが石にした。
 魂を抜き取ったのだ」



「!! なんということを!!」



「もう逃げられんぞ。娘」



「私を生贄にしてかまいません。
 その代わりに石にされたエリックを
 もとにもどすことはできませんか?」



「このメドゥーサに命乞いをせずに頼みごととは
 よほどそのエリックとやらを大事に想っているのだな」



「お願いします。彼のためなら私は命など惜しくありません」



「メドゥーサは 命より大事なものなどないと思ってきた。
 自分の命と引き換えに得られるものなどあるのか?」



「私とエリックの命は どちらも大事です。
 しかし、どちらかを選べと言われれば
 迷わず私は エリックの命を助けてほしいと思います。
 それは 私が命を捧げてもいいほどエリックを
 愛しているからです。
 ここであなたが私を生贄にすることで
 人間になれるのならばしかたないでしょう。
 あなたが人間になれて
 私が生贄にならずに
 エリックが石から元どおりの人間になれる方法が
 あるのならばいいのでしょうが・・・
 私には ここから逃げ出すことも出来そうにありません」



「その愛とはなんだ? メドゥーサには見えない」



「命も見えませんが必ず途絶えてしまうものです
 でも 愛はちがいます。愛は永遠なのです」



「永遠? うそだ! まさか! この世で魔法を使っても
 永遠に存在するものなどないはずじゃ
 どんなものもいつか砂のように朽ち果てる」



「たとえ私が生贄になっても愛は永遠に残っていくでしょう。
 私はそれを信じたいのです」



「娘! おまえはこのメドゥーサをからかっているのか?」



「いいえ。ウソなど言っていません。
 その証拠に人間はこの何千何万年も
 命は失ってきましたが愛は今も生きつづけています」



「メドゥーサがこれからなろうとしている人間には
 いつかは途絶える命。
 これから人間になれたとしても数十年の命。
 おまえがこれから生贄になって得ようとしているのが
 永遠の愛。
 う~む。この何百年も生きてきたメドゥーサなのに・・・。
 訳がわからなくなってきた。
 娘! いま死んでもかまわないというのか?
 おまえはこのたった十数年を生きてきただけでよいのか?」



「はい。いつか途絶える命。死んでもかまいません。
 愛する人にめぐり会えた歓び。
 愛する人のために命を捧げられる歓び
 生き続けた長さではありません。
 この世に生まれてきて愛を知ったことが最高の歓びです。
 もちろん愛に包まれてこれからも生きていきたかった・・・けど」



「う~~む。
 我がメドゥーサは人間になりたいとばかり思っておったが
 人間になって何を得ようとか
 しようとか考えていなかった・・・。
 メドゥーサは この何百年
 人間を憎んで生き続けてきた
 これからもそうだろう・・・」



「憎しみからは 何も生まれません。
 永遠に続く戦いと苦悩の日々です。
 それはとても悲しいことです」



「・・・・・・・・・・・・・。
 我がメドゥーサは 憎むべき人間になろうとしていた。
 愚かだったのか・・・」



「人は いつでも愚かです。
 しかし、人は変わることができます。
 それは愛を知ることによって変わることが出来るのです」



「よくわからん」



「人間は愛する人のために愚かな戦いをして
 憎しみの連鎖を繰り返してきました。
 いまも繰り返しています。
 私は それが悲しいのです
 私の父も母も戦争によって命を奪われました。
 でも私は 父と母の命を奪った人間を憎みません。
 人を憎まないほうがどんなことよりも勇気がいるのです。
 憎しみの連鎖を止めなければ
 人間は愚かな戦いを永久に繰り返してしまうでしょう」



「我がメドゥーサも人間を憎み
 幾つもの魂を奪い
 今日までおるのだ。
 おまえのような人間がおったとは・・・」



「人間から憎しみを無くすことが出来たら
 どれだけ平和なことかしれません。
 世の中に愛が満ち溢れることでしょう」



「・・・・。
 我がメドゥーサの脳裏に浮かんでくるのは
 人間たちの笑顔・・・・。
 う~~~む
 これが愛なのか・・・」



「どうぞ。
 私の命。生贄に捧げてください。
 その代わりに石になったエリックを人間に戻してください。
 お願いします」



「やめた。
 我がメドゥーサは おまえを生贄にするのをやめた」



「えっ!? どうするのです!?」



「おまえがさっき言っただろう?
 我がメドゥーサが人間になり
 おまえが生贄にならず
 石にされたエリックを人間に戻す方法。
 その方法があったのじゃ
 しかも 我がメドゥーサが人間を憎まない方法」



「・・・?
 そんな方法が?」



いつのまにか夜になり

いつのまにか夜が明けていた。


深い森の中からでてきた人間たちがいた。


笑顔で手をつなぎながら幸せそうに歩いていたのは
ミッシェルとエリックだった。



その後ふたりは
幸せに暮らした。


命ある限り愛を貫き通して。



さらに愛を自分たちの子供に託して







ところで下半身を木の根にされていた魔女の娘メドゥーサは
どうしたかって?









ミッシェルとエリックのふたりのあいだに出来た子供
その娘の名前はメドゥーサ





メドゥーサは両親に愛されて育った




憎しみをもたないという魔法にかかったように

メドゥーサは
笑顔を絶やさない愛に満ち溢れた人生を送ることが出来た


メドゥーサが封じ込められていた森の奥深くそこには
メドゥーサのいた木のまわりにミッシェルが書いた
魔法陣が描かれていた


これがメドゥーサが最後に使った魔法
それはミッシェルの子供になること


愛は 人を信じる魔法


愛の強さはすべてに勝る


愛は 人を幸せにする






人は見えないものを信じられているときが幸せなんだと最近気がつきました



では おやすみなさい