書くことが好きです。
短編だったり連載だったり、物語の伏線だったり。
思いついたら気の向くままに、書いていきたいと思います♪
…あ、ちなみに著作権は放棄してないので(笑)
海
「わー、っと」
たいした叫び声でなく、明らかに作ったような抑揚のない叫び声をあげて、なつみは後ろ向きにばふんと倒れた。やわらかい砂浜が彼女を傷付ける事なくしっとりと受け止める。んーっと気持ち良さそうに空に向かって伸びをする彼女に、そんなふうに寝っ転がったら髪とか砂っぽくなるよって声をかけたら、いいもーんって嬉しそうに笑いながら私も横になるように誘って来た。
「さおりんも一緒に寝転ぼうよー」
「嫌よ、砂まみれになるじゃない」
っていうかお年頃の女子高生が夕暮れ時の海で寝転んでる姿って傍からみてどうなのよ。
突っ込みたくなる衝動をぐっと抑える。
「えー?気持ちいいよー?」
そんな私などお構いなしにころころと笑って淡い夕焼け色に染まりかけた空を見つめたまま喋りかけてくるなつみ。まだ幼さが残る顔にほのかなオレンジの光がよく似合う。
――何があったんだろう。
ただ静かに波音が繰り返される中で、私はまだ何も語ろうとしないなつみの横顔を見つめた。
何がこの子を、日曜日の夕方に親友を海に呼び出させたのだろう。
何をするでもなく、持て余していた日曜の午後。子供向けのテレビアニメをボケーっと眺めていたら、突然幼馴染みのなつみから電話があった。
『今から海に来てほしいの』
短くそれだけで切れた電話は、なつみに何かあったことを私に伝えるのに十分だった。なつみは昔から何かあると「海」に行く。
普段おっとりしているなつみは、誰に何を言われても「えー?」とか言ってにこにこしてるから、ちょっとやそっと傷ついたくらいじゃ誰にもわからない。そんなに強くないくせに、そうやって隠すことばっかりうまいもんだから、みんな気付かないうちになつみのことを傷付けてしまう。もちろん私だって例外じゃない。
だから、なつみからのSOSは絶対に見逃しちゃいけない。そうしていつの間にかなつみ自身も気付かないうちに自分を追い詰めてしまうから。なつみが海に行くのは、もうSOSそのものだ。
「ねー、さおりんってばー」
私が黙ってなつみを見つめていると、嫌だって言ってんのに、なつみはやくはやくーって寝転んだまま私の手を引っ張った。なんだかあんまり嫌がるのも可愛そうで、仕方がないから隣りに腰を下ろして空を見上げてあげることにする。あくまで座るだけの私に、砂だらけになっちゃえーっとか勝手なことを言いながら砂を掴んで投げつけてきた。
あー、もう。この服今日おろしたばっかりなのに。
「こらっ」
「きゃー、怖ーい」
「…あのねぇ」
「あはは、ごめんごめん」
コイツは本当に落ち込んでんのか?
楽しそうに笑い声をあげるなつみはいつもと変わらない。だけど、たぶん…確信はないけど、声や表情が少し不自然に明るい気がする。
ひとしきり笑うと、なつみは、あーあ、と溜め息をついてまた空を見上げた。そのまましばらく流れて行く雲の行方を眺めている。
「なつみ?」
不意に訪れた沈黙が不安で、彼女の名前を呼んでしまう。まだ空は明るいのに、彼女が黙っただけで心なしか世界が物寂しくなってしまったような気がして。
「あのね」
私への返事の代わりに、なつみはポツリと静かに言った。
「こうやって砂浜の上に寝転ぶとね、『あー、地球の上にいるんだなぁ』って思うの」
(続きます)
ドキドキ
おまえが死ぬときゃ俺も死ぬんだよ。
ドキドキ
「……好きすぎて死にそう」
「…は?」
付き合い始めて3ヶ月、コイツの突発的発言にはもうかなり慣れたつもりだったが、あまりに突拍子もないことを言うもんだから、思わず間抜な声を出しちまった。俺の声に続いて、夕暮れ時の冷たい秋風がひゅうっと音をたてて2人の間を通り抜ける。
「いや、その…心臓がバクバクしすぎて死んじゃうかもって」
妙な沈黙が流れた後に、マリコはなんだか恥ずかしそうに笑いながらそう付け足す。
いや、そんな追加説明されてもわかんねーもんはわかんねーから。
「アホか」
「あ、アホって…!」
とりあえず一言答えてやると、マリコはひどいひどいと喚きながら俺にむかってむぅっと膨れてみせる。その様子が可愛いっちゃ可愛いんだが、はっきりいってアホだ。
「アホだろ」
俺は断言してそのまま帰り道を急ぐ。
「アホじゃないもんっ!心臓が一生にドキドキする回数って決まってるんだよっ!!」
パタパタと足音を響かせながら駆けてきたマリコはものすごく真剣な顔をして俺に抗議を仕掛けてくる。
「……」
だからなんだっつーんだよ。
そう思いながら大きくため息をひとつ。
「あっ、信じてないなっ!?」
俺のため息がよっぽど気に入らなかったのか、チラッと一瞥をくれてやると、マリコはもう知らなーいとか言いながらそっぽを向いて石蹴りを始めた。
もう下校する生徒もほとんどいなくなった並木道に、コンコンッと石の転がる乾いた音が響く。
「…何か意味あんのかよ」
「え?」
照れ隠しに不機嫌を装った呟くような俺の問いかけに、俺から少し離れてつまらなそうに石を蹴っていたマリコは明らかに聞き逃しましたって顔して振り返りやがった。
くそっ、一回で聞けよ。
「仮に心臓がドキドキする回数ってやつが決まってるとして、それが何か意味あんのかってきいてんだよ」
チッと舌打ちをしてから、もう一度言葉を重ねる。
睨みつけるような瞳は、マリコから離さない。
「…早死にしちゃうじゃない」
少し間をおいてから、何言ってんの、と、さも当然のことのように眉をひそめて俺を見上げるマリコ。
あー、ダメだ。コイツ全然わかってねー。
「…アホだな」
「なっ、またアホって…!!」
アホをアホって言って何が悪りぃよ?
傍にいるだけで死んじまいそうなほどドキドキしてやがるくせして、俺のこの真剣な瞳を見てその台詞はねーだろ。もうちょっとマシな回答しろっての。
俺は再び抗議を始めようとするマリコの腕を右手でぐいっと引き寄せると、そのままそっと耳元で一言ささやいた。
「んなもん俺も早死にするから意味ねーんだよ」
(あとがき)
うわー、うわー!恥ずかしいッ!!もう恥ずかしくて死んじゃう…。
設定では彼らは高校生のつもりです。学校から帰る途中での出来事、みたいな感じで。
昔、人が一生にドキドキする回数は決まってるんだってどこかで聞いてから、ずっと書きたかったテーマ。
駄文ですが、アマチュアさんなのであんまりきびしく突っ込まないでくださいねっ;
彼女がドキドキしてるのと同じくらい、ドキドキしてる彼。
