あまりに忙しくて、文字のごとく心が荒んで愚痴っぽくなってきた。

これはいいことないなと思って、午前中休んで映画館へ行きました。

 

本当は先週やっていた『モリコーネ』に行きたかったのだけれど、仕事がどうにもならなくて断念。

だったらせめてイタリア映画を!と思って選んだだけだったのだけれど、イタリアの風景も美しく、主演のレモ・ジローネの微笑みにすっかり癒されました。

本当に、陽だまりのような、温かくて心に深く沁みる素敵な作品。私がもしキャリア50年の俳優だったとして、たとえば引退作品がこんな作品だったらいいなあなどと想像してしまいました。

 

「イタリアの美しい村の古書店を舞台に、本を通して老人と少年が交流する姿を描くハートウォーミングストーリー」という紹介文からもわかるように、『ニューシネマパラダイス』の本版ともいえるかもしれない。

 

でも、これは「現代」の話だ。

 

説教臭さをまったく感じないが、現代に対してかなり強いメッセージを突きつけている。

 

この作品は、老人リベロと少年エシエンとの交流が縦糸だ。その交流は、かけがえのないものとして老人の人生の最後を、そして少年の未来への道を彩る。

 

しかし、それと同じくらい、リベロが古書店で過ごすただの一日も、豊かな横糸に溢れている。

 

隣のカフェ店員の若者とは、難しい話も深い話もしないけれど、お互いを大切に思っていることがズンズンと伝わってくる。

リベロが古い日記を読むときのBGMは、机に置かれたオルゴールだ。

インターネットで簡単に本が探せることがわかっていながら、客は様々な思いを持ってリベロの本屋にやってくる。

他の場所では、面倒くさい人扱いされていたり、自分を隠したりしているであろう人々が、リベロの古書店では否定されることなく温かく包まれていく。

 

幸せとは何だろう。

 

希望を持てるということ。

ただ、穏やかに好きな人に囲まれて過ごすこと。

自らの願いを否定されないこと。

 

希望が叶うことばかりではない、その人にとっての幸せが穏やかに共存する世界になることを祈り、まずは目の前の子どもたちのために明日も仕事をしよう。