日記 5月24日 | ラサール石井オフィシャルブログ「ラサール石井の生き急ぎ日記」Powered by Ameba

日記 5月24日

朝5時起床。あらすじの二幕目書き始める。


一幕で広げた風呂敷を二幕でうまくたたんでいくわけだが。


思いの外、筆が走る。



いつもラストはどんでん返しだ、新たな敵だ、とついついサービス精神で書き込み過ぎ、上演時間を長くしてしまいがちなのだが。



今回はぐっとシンプルに終わらせてみた。



あらら不思議。あれほど進まなかったシノプシスが、意外にきれいに感動的に。
しかも朝の9時に出来上がった。



もちろんまだまだ変更はあるだろうが。とにかくデッドラインの一日前に終わった!


めでたい!


実は10時から仕事があるので、ここがベストのタイミングなのだ。



出来上がったあらすじをメールで送り、小綺麗な格好に着替えて出かける。



今朝は昔から舞台やアニメの制作でお世話になっているネルケブランニングという会社の月一回の朝礼に出席する。


社員の皆さんに、訓辞というわけでもないが、30分ほど、エンタメ業界に従事する上での、自分の考え方や苦労なんかを喋って欲しいという依頼だ。


ネルケとはもう20年ぐらいの付き合いで。社長のMくんに、赤信号劇団が三谷幸喜さんに脚本を書いてもらった「イメルダ」の制作に加わってもらったのが最初だった。



あの頃は若手イケメン社長で、オフィスも小さかったのに。今や40過ぎて、EXILEのビルの2フロアーをオフィスに構え、社員65人の大会社に成長した。
いや、やっぱりやり手なんですね。



もう一つ彼との大事な出来事は、こち亀アニメの両津勘吉の声の仕事に私を推薦してくれたことだ。



「オーディション受けてみませんか」と言われ、スタジオでマイクの前に立たされ、こち亀のコミック本を渡されて、両津のセリフ部分をいきなり読まされた。
アニメの絵なんか存在せず、台本すらない。


なんとなくダミ声でそれを読んだ。サルの財宝を盗んで金貨の山で大喜びしているシーンだった。
サブから笑い声が聞こえてきたのは覚えている。


秋本先生はいなかったが、後でテープで聴いてOKが出たらしい。


それから私とこち亀の付き合いは始まった。


その後の私の人生は大きく変わった。
だからM社長は私の恩人ということになる。



それから、こち亀の舞台版ミュージカルの脚本演出を始め、沢山の舞台をMくんと作った。


しかし、ここ三年ほど付き合いがなく。
Mくんもそろそろ俺に愛想をつかしたかな、と思っていたら、「横山剣大座長公演」の演出でオファーを受けた。そりゃあ受けて立ちますよ。


朝礼では、とにかく芝居を演出するときは座組の仲の良さと現場の風通しの良さを一番に考えるということを喋った。



それを受けて社長のMくんが、石井さんの座組はほんとに仲がいい、それが舞台にも出るんだと言ってくれた。
それは役者を役の大きい小さいや、セリフの多い少ないで差別しないからだ、とも評価してくれた。


役者なんて上手い下手で差別されて、当たり前だ、という考えの演出家もいるだろう。上手い役者にしか興味ない演出家もいるだろう。


でも、まずい役者にも、また味がある。始めたばかりの若手にもやりどころはあるのだ。



なんだか、普段の考えを認めてもらい、誇らしい気持ちになったのであった。

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