チラホラと咲き始めた桜。
その樹の下を袴を履いた女子学生やら、スーツを着た男子学生たちが、手に証書筒を持ち正門へと向かって歩いている。
不安よりも期待のほうが大きいのであろう彼らの笑顔。それが、曇ることなく進んで行けることを切に願う。
「教授も式に出席されてたのですよね」
いつもの彼。
「そうだね。毎年のことなのに、送り出すのは何度やっても慣れないね」
私の研究室からも数人の卒業生が出た。
ゼミ生から参加していた学生もおり、多くの苦楽を共にしたものだ。
「やっぱり寂しいですね」
心を見透かされたような彼のひと言に、ドキリとさせられる。
「入ったばかりのボクに、いろんなことを教えてくれた先輩も卒業だと思うと……」
「そうだね。この余韻も消えないうちに新入生が来て、また、新しい研究室のメンバーも来て、新しいテーマも……。」
そこまで口にして、ハッとなる。
「忘れていましたよ。ウサギ君。来年度からは本当に新しいテーマになるのでした」
「と、言いますと?」
「今までの研究は、今年の卒業生たちの成果でひと区切りついてしまったのです」
「分かりました。なら、ロボットやりましょう。教授」
目を輝かせながらの提案した彼は、もうその先に待つ組み立てやら、実験やらに思いを馳せているようでした。
「金属……ロボティクス……軽量で強固な素材……」
私も頭をフル回転させて、新テーマとその予算獲得に向けての道筋を思い描く。
「ウサギ君。2、3日は忙しくなりますよ。提案書……は私が書くとしますので……こちらの名刺の方々とのアポイントと設定して下さい」
「ひゃ〜。大変だ。日程はどうしたら良いでしょう?」
「3日後以降で、先方のご都合の良いところで、お願いします」
余韻に浸る暇すらなく、私の研究室はにわかに慌ただしくなるのでした。