伯爵の領地は本当に広い。
1つの山、まるまる領地です。
私有地だから、警察も口を出し難いです。
伯爵は、ハンターウェアを着て、自慢の猟犬、ブリティッシュセッターの純血種を6頭と、アシスタントに二人の従者を出しました。
従者が犬達を面倒見ています。
誤射を避ける為と、動物は色盲ですから、この色が見えないのです。
私は、ガンベルトに、二発の純銀の弾を用意して来ました。
表向きは、アクセサリーです。
純度99.9%の銀の弾丸。
しかも、魔除けのお祓いをしてある特注品です。
実は、四発、駐英日本大使館の叔父の所に送られていました。
大使館への荷物は原則フリーパスです。
私と叔父は、二発づつ、弾丸を持っていました。
伯爵から借りたライフルが、私の持っているライフルと同じタイプだから、弾丸は撃てます。
午前中に、二匹のキツネを伯爵と私が撃ちました。
伯爵の猟犬は、優秀で、ハンターの方にキツネを出しました。
午後からは、別のポイントに向かいました。
休憩小屋で、昼飯を食べて出発しようとしたら、靴の紐が切れました。
不吉な前兆の筆頭でした。
小屋から、ポイントに向かって歩いていたら、霧が出始めました。
瞬く間に視界が1メートルくらいになりました。
残念だが引き返そう。
私は、伯爵に言いました。
いつもなら、強気な発言する伯爵も、この時だけは同意しました。
それほど凄い濃霧でした。
引き返そうとした瞬間、猟犬がワーニングボイスで鳴きました。
目の前に、いるはずの無い熊が現れました。
伯爵が二発命中させたけど、血がでません。
叔父さん、弾丸を替えよう。
私と叔父は、銀の弾丸を装填しました。
猟犬が、二頭熊に体当たりしましたけど、逆に張り手を喰らい、ぶっ飛びました。
ズキューン、ズキューン。
私と叔父が熊の目に弾丸を命中させました。
熊は、その場に倒れました。
すると、あれほど濃かった霧が晴れました。
ここは、忌まわしい場所だ。
伯爵は、真っ青な顔で言いました。
そこは、かつての処刑場でした。
伯爵の家に年貢を収めなかったり、反抗した人間を殺した場所だった。
熊の死体がいつの間にか消え失せました。
その日は、伯爵の先祖が最後の処刑をしてから50年目に当たる日だったと、後で分かりました。
親の因果が、子に祟る。
至近距離で、熊を撃ったのは初めてです。
ぶっ飛ばされた猟犬は、辛うじて一命は助かりましたが、骨折していました。
貴族も先祖が残酷な事をすると、子孫が怖い思いをしますね。
