新年早々、一族の老婆が餅を喉に詰まらせ、病院に救急搬送されました。
どうにか一命はとりとめましたが、病院に入院しました。
四人部屋に入りました。
私がたまたま見舞いに行きました。
すると、老婆の隣のベッドに、知っている名前が有りました。
池上浩子
私が初めて交際した女性です。
30年ぶりの再会でした。
昔の輝く美しさは、有りませんけど、気品のある美人でした。
ただ、はっきりと死相が出ていました。
主治医の名前を見たら、昌光でした。
昌光は、ガン治療のスペシャリストです。
浩子は、ガンなんだ。
私は、悟りました。
一族の老婆は、私が来たら恐縮していました。
昌昭様に、お見舞いして貰えるなんて、婆やは嬉しいです。
そう言って泣いてしまいました。
浩子は、私に何か言いたい様子でした。
浩子と二人で屋上に行きました。
私、この病院を紹介して貰ったの。
浜松医大の先生から、この病院の真田先生を紹介して貰ったんだよ。
そうか、浩子は昌光を見ていたな。
最近は、病院のドクターの写真もインターネットで見れる時代です。
浩子、結婚したのか?
私は、思わず聞いてしまいました。
昌昭さん以外の男性と結婚なんて考えなかったは。
仕事が恋人のような生活していたんだよ。
昌昭さんこそ、結婚したの?
結婚したけど、妻に7年前に先立たれたよ。
そうなんだ。
今は一人なんだ?
私が、元気になったら、食事に行かない?
良いよ。
久しぶりに浩子と食事も良いね。
そろそろ、点滴の時間だから、ベッドに戻らないと。
そう言って、ベッドに戻りました。
ベッドには、昌光が待っていました。
池上さん、あまり動かないでと言ったでしょ?
先生、すいません。
浩子は、謝りました。
浩子は、点滴を射たれました。
また、来るよ。
婆や、おとなしくしていろよ。
そう言って、廊下に出て、昌光を待ちました。
抗がん剤を射ってから、昌光が出て来ました。
昌昭兄さん、僕の部屋に来てよ。
今日、電話しようと思っていたんだよ。
昌昭兄さん、浩子さん、もう抗がん剤で治療はキツいよ。
私も、浜松医大からの紹介状見て驚いたよ。
まさか、30年ぶりに会うとは思わなかった。
昌光、浩子に死相が出ているけど、どうなんだ?
今、生きている事が奇跡だよ。
全身にガンが転移して、助からないよ。
浩子さん、昌昭兄さんに会いたいから転院して来たんだよ。
僕が主治医になれば、昌昭兄さんに連絡すると思っていたんだよ。
私と浩子は、同じ持病を持っていました。
喘息持ちなんです。
喘息の両親からは、絶対に喘息の子供が生まれます。
それは、メンデルの遺伝法則で分かっています。
喘息の苦しみを子供には味会わせたくない。
だから、結婚は止めよう。
浩子は、それを聞いて泣きました。
でも、浩子も喘息の苦しさを知っています。
私の転勤もあり、浩子もアメリカに転勤して自然消滅する形になりました。
イギリス出張の前に、浩子に会いに行きました。
病院に行く途中、昌光から電話が入りました。
浩子さん、危篤だよ。
来れますか?
今、病院に向かっているよ。
浩子は、ICUにいました。
酸素マスクを着けて、眠っていました。
真田さん、教授が白衣など装着してICUに入って下さいと、言ってたしたよ。
私は、マスク、キャップ、白衣を装着してICUに入りました。
浩子さん、昌昭兄さん来ましたよ。
昌光がそう言うと、浩子は目を開けました。
苦しい息使いの中で、だ、い、て、ま、さ、あ、き、さ、ん。
そう言いました。
流石に抱けないから、顔に頬ずりしました。
浩子は、笑顔を見せました。
ありがとう、さようなら。
そう言うと、ハートモニターが停止しました。
兄さん、どいて。
昌光が心臓マッサージをしました。
でも、助かりませんでした。
浩子のお母さんが来ました。
真田さん、浩子は、貴方以外の男性とは交際しませんでした。
良い縁談は、いくつも有りました。
私は、孫を見たかったんですよ。
例え、喘息持ちでもね。
泣きながら言われました。
人生で、一番心が痛む言葉でした。
浩子
屋上でキスしなかった事を後悔しています。
人生を変えていたかも知れない女性でした。
恵利華と言う許嫁がいなかったら、結婚したかも知れない。
そう考えると複雑な心境です。
浩子の冥福を心から願います。