昭和33年9月に、狩野川台風が伊豆半島を直撃しました。
まだ私は産まれていない頃の話です。
しかし、先輩達から話は聞いています。
千人単位の死者を出した災害です。
あれからもうじき60年になります。
9月の残暑で死体の腐敗が酷かったから、身元の分からない死体の焼却は迅速に行われたそうです。
その死体の運搬に関わった先輩は、まだ学生だった時に手伝いを命じられたそうです。
死と言う現実を思い知らされたよ。
9月の秋季演習が終わると、飲み会では出る話です。
死体の焼却をした場所は、商業的には一等地ですけど、何故かテナントが長く続きません。
地元の人間は、ここで過去に何が行われたかを知ってるから気味悪がって行きません。
私もよほどの事が無い限りテナントには寄り付きませんでした。
しかし、ある有名なテナントが入りましたから、東京から来た友人にせがまれて仕方無しに行きました。
しかし、行った事を後悔する事になりました。
店は、一流の店だけあって、内装もスタッフも素晴らしい物でした。
しかし、浮遊霊が巣食っていました。
私は、5000円のコースを頼みました。
東京の本店で食べた事があるから、味は想像できましたけど、味覚が突然麻痺しました。
当時の私は、脳梗塞で倒れる前でしたから、神の舌と呼ばれるくらいのグルメでした。
7種類のミネラルウォーターの利き水が出来たくらい、繊細な味覚が有りました。
コースが出て来てから霊聴が激しくなりました。
死ぬ前に、こんなご馳走食べたかったな。
子供の霊が私の耳許で囁きました。
もう一度、こんなステーキを堪能したかった。
紳士の格好をした霊が言いました。
私は、早々に食べ終えて、友人も早食いさせてテナントを後にしました。
車に積んである浄めの塩を友人と私に呪文を唱えながら掛けました。
口直しにラーメンを食べに、少し離れた沼津に行きました。
沼津では、味覚が戻っていましたが、二度とあのテナントには行きませんでした。
それから、半年くらいでそのテナントも閉店しました。
今は、廃墟となっていますね。
立地の良さだけに、気を取られると、思わぬ落とし穴が有ります。
見知らね土地での名物料理を味わう事は楽しみですけど、ホテルや旅館で評判を聞いたり、インターネットで調べてから行きたいですね。