東京と愛知で開催されることをご紹介しました


東京 Bunkamuraザ・ミュージアム
3月3日(木)~5月22日(日)
愛知 豊田市美術館
6月11日~8月28日(日)
今年は幸運なことに
「地理学者」が来日している間に、更にフェルメールの作品を見るチャンスが訪れます


フェルメールの生きた時代は郵便制度が整って、
一般市民の間でも文通の習慣が広まった頃でした

フェルメールは手紙を題材にした作品を6点描いていますが、
今回、その内3点が来日します

京都 : 京都市立美術館
2011年6月25日(土)~10月16日(日)
東京 : Bunkamuraザ・ミュージアム
2011年12月23日(金)~2012年3月14日(水)
来日するのは、「手紙を読む青衣の女」、「手紙を書く女」、「手紙を書く女と召使」の3作品

その他、「人々のコミュニケーション」を題材にした、オランダ黄金期の画家の作品が展示されます

なかでも日本初上陸となる「手紙を読む青衣の女」は、来日直前にオランダで修復作業が行われ

京都展にて修復後世界初公開

今夜は、来日するフェルメール3作品をご紹介することにいたしましょう

『青衣の女』 46.3×39cm オランダ アムステルダム・ライクス・ミュージアム所蔵

ゴッホが手紙の中で「とても美しい身重のオランダ婦人」と書いていた手紙を読む女性の絵。
子だくさんであったフェルメールの妻と言う説もありましたが、
最近の研究では、17世紀前半はオランダ市民階級のファッションが注目されていた時代で、
スカートを三重にハイウエストに穿くのが好まれていたそうで、
どうやらマタニティウエアではないようです。
窓もカーテンもないけれど、光が左から差し込んでいるのがわかります。
シンプルな青と茶色と白の濃淡だけと言ってもいい色数の少ない絵でありながら、
輪郭線も引くことなく浸透しあうようなぼかし方をしつつなじませていて、
フェルメールの作品において最盛期と言われる1663年頃の完成度の高い作品です。
また壁にかけられた地図は、「兵士と笑う女」に描かれたものと同じです。

修復作業を終えて、色が鮮やかに甦った作品を見られるのが楽しみですね

『手紙を書く婦人と召使』 72.2×59.7cm アイルランド(ダブリン) アイルランド・ナショナル・ギャラリー所蔵

こちらの絵は2008年の『フェルメール展』で、『絵画芸術』の急遽出展中止により、
代打のような形で急遽来日したのですが、ご覧になられた方も多いことでしょう

床の上に手紙と封蝋と、赤い封印、くしゃくしゃになった手紙のようなものが落ちていて、
彼女が受け取った手紙か、夢中に書いている手紙の前の書き損じとも取れます。
また、壁面に掛かっている画中画は『モーセの発見』です。
この作品はフェルメールの未亡人が、1676年に617ギルダーの借金のカタとして
デルフトのパン屋・ファン・バイテンに引き渡したものです。
その後はオランダ国内とウィーンのコレクターなど何人かの手を経て、
19世紀末にパリに売られ、ダブリン郊外に邸宅を持つ、
元英国下院議員のバイト卿夫妻が絵画コレクションと共に移り住んだ
ラスボロー・ハウスにありました。
当時この絵を観ることが出来たのは、バイト夫妻とその友人・知人のみでした。
しかしこの絵はラスボロー・ハウスから、これまで2回盗難に遭っています。
1974年4月26日の夜、この作品のほか19点の絵画が盗まれました。
IRAの女性活動家のほか、中核メンバーも関与していました。
犯人の逮捕により、絵は無事に戻ってきました。
1986年にはダブリンの有名な犯罪者とそのグループが盗んだ絵を闇で売る目的で、
この絵のほか11点を盗まれるという事件が再び起きました。
事件発生から7年後の1993年に、フェルメールを含めた絵が囮捜査によりベルギーで押収され
事件は一件落着となりました。
絵が無事に戻ってきて、この作品ほかラスボローハウスのコレクションの中核となっていた絵は
アイルランド・ナショナル・ギャラリーに寄付されました。
『手紙を書く女』 45×39.9cm ワシントン・ナショナル・ギャラリー所蔵

交流の長い方々はご存知の通り、1999年4~7月に上野の東京都美術館にて
ワシントン・ナショナル・ギャラリー展が開催された時に出かけて

この作品を見てフェルメールという画家を知り、大好きになるきっかけを作ってくれた作品

とにかく額の向こうに本当に彼女がいるのではないかというくらいの描写で、
彼女の微笑みと光の表現の仕方に惹きつけられてしまいました

フェルメールが何度も描いている明るい黄色のガウンを身にまとった少女の絵は、
光が左から差し込んでいるのに、背景は左に行くほど暗くなるという不思議な雰囲気の絵です

今夜は来日する3点のフェルメール作品を私の目線で、
また、画家自身と絵の神秘性と希少性ゆえに
政治的活動の人質となった歴史も含めてご紹介しました。
フェルメールの絵の中には、盗まれてボロボロになった作品もあれば、
いまだに行方不明の作品もあります。
影の部分のエピソードですが、いつかまたそんなお話もしたいなって思っています。
ラピたん、この展覧会を京都で観たいな

