400年の時を超えて | Lapislazuliのブログ

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先月、あるブロガーさんと、この絵についてプチメの交換をしてから
ずっといつか書きたいと思って温めていた、一枚の絵とその背景をご紹介しますきら

これは今から約400年前のローマで実際にあった悲しいお話。。。

グイド・レーニ 『ベアトリーチェ・チェンチの肖像』 (1599)

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この美しい女性の絵は、美人画としても美術ファンの中では有名な一枚。

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モデルはベアトリーチェ・チェンチ (1577.2.6~1599.9.11) 享年22歳。

白装束を着せられ、髪を白いターバンでまとめられている。
彼女はこの直後、断頭台の露と消えた。
ターバンでまとめられた髪は、刑の執行の際に、髪が邪魔にならないようにするためのものだった。

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ローマでも名門貴族のチェンチ家の娘として生まれた彼女は
極悪非道で暴力気質の持ち主である父・フランチェスコに城に監禁されて育つ。
更に彼女は20歳になった頃から、父親の快楽の吐け口にされてきた。

家族は父と、兄・父の2番目の妻の継母・その間に出来た弟で、家族も虐待を受け続けていた。
ベアトリーチェは父を告発したが、その怒りに触れ、ローマの北の城に家族とともに追い払われる。
肉体的にも精神的にも限界だったのだろう…。家族はそこで父親の殺害計画を企てる。
チェンチ宮の召使い2名も手を貸したが、一人はベアトリーチェの秘密の恋人だった。

父・フランチェスコを金槌で殴り殺し、死体をバルコニーから突き落とした。
秘密の恋人だった召使いは拷問の末に死亡。彼は真相を一切語らなかったという。
彼女は事故だと主張したが、裁判の結果は断頭の刑。

ローマ市民は彼女に深く同情し判決に抗議。
死刑執行は短期延期されたが、ローマ市民の想いはバチカンの壁に阻まれる。
当時の教皇・クレメンス8世がチェンチ家の領地と財産の没収を企て、
一族全員の死刑執行を言い渡す。
彼女の弟だけが死刑執行を免れたが、家族の死刑執行を見せられた上に全てを失ったと言われている。

この絵は処刑直前の牢屋の中にいるベアトリーチェを、チェンチ家と縁のあった枢機卿が
クイド・レーニに描かせたと言われている。グイド・レーニは当時24歳。

1599年9月11日。サンタンジエロ橋の広場で、一族の処刑が執行された。
彼女の遺体は、ローマを一望できるサンピエトロイン・モントリオ教会に眠っている。
名門貴族の家に生まれた彼女の、名前も墓碑銘も刻まないことを条件に出された上での最後の願いだった。

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グイドレーニの『ベアトリーチェの肖像』は、彼女の美貌と繊細なタッチでとても美しい絵きら
だけれども、彼女はあまりに悲しすぎる目をしています。
彼女の言葉を聞きたいけれど、もう何も語る気力さえないように見えます。
ただ、「私は一体、何のために生まれてきたのかしら?」そう言っているように思えてなりません。

とても美しい絵だけれど、あまりにも悲しすぎる絵。
彼女の悲しみは400年の時を越えても、痛いほど感じられるくらいに伝わってきます。

絵は美しくなければならないというのが、私の個人的意見ですきら
戦争や、残虐な絵、暗い絵も展覧会では観るけれど、それを私が好きになることはありません。
私の好きな美術鑑賞の世界では、せめて美しく穏やかなものを見て、心癒されたいと思っていますきら

展覧会に行くと図録を買うのがいつも楽しみな私ハート
画家のこと、描写の技術的なこと、歴史的背景、絵のテーマやその意味を知りたいからきらきら

でも解説者の意見を丸呑みにすることは避けています。
絵は感じるもの。個人によって、好き嫌いもあれば感想も違うと思っているから・・・。
自分の目と心の目で、肌で感じるものだというのが、美術鑑賞に対する私の想いきら

先入観なしで観ることと、背景その他を知って観ることきら
どちらも展覧会で私がとても大切にしていることで、よく同じ展覧会を2回訪ねる理由ですハート

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今日ご紹介した、グイド・レーニ 『ベアトリーチェ・チェンチの肖像』は、
ローマのバルベリーニ国立古典絵画館に所蔵されていますきらきら