土屋篤典「近代化への問い-フランス革命と、その前後」
 (『歴史地理教育』912号、2020年、30~35ページ)

 

1.目次

1.授業のねらい

2.授業案について

 (1)一時間目

 (2)二時間目

3.まとめにかえて

 

2.著者について

 著者の土屋篤典氏をGoogleで検索すると、「岡山県平和委員会2009年予定」がそのトップに表示された。このサイトを見ると、土屋氏は中国地方を拠点に平和に関して多くの講演をなさっている方のようだ。

 また別のサイトでは、山陰中央新報ONLINEの2019年12月の記事がある。教員免許状更新講習で新聞活用をテーマにした講義が開かれたという内容で、そのなかに土屋氏のインタビューが掲載されている。2019年の時点でも、今回の歴史地理教育に記載されているプロフィールの通り、岡山県高梁市立宇治高校で教諭としてご活躍のようだ。年齢は54歳と書かれていた。

 また、1997年の歴史地理教育にも寄稿している。「特集・多発する民族紛争」のなかで「実践記録・高校現代社会 ユーゴスラヴィア問題を授業で扱って」という記事を書かれている。

 

3.要旨

 土屋は歴史総合の学習指導要領を踏まえて、本稿で考案する授業のねらいを「前近代の社会は人民主権や基本的人権の尊重という新しい権利意識や政治意識で変化しただろうか」と設定する。そのうえで、生徒には資料から情報を読み取りまとめる力はもちろんのこと、歴史事象で生じる対立関係や協力関係をつかむ力、次に起こる歴史事象を見通す力を身につけさせたいと述べる。

 具体的な授業案としては、「人々の生活や社会の在り方が近代化に伴い変化した」ことを考察するために、フランス革命に1時間、ナポレオンとその帝国について1時間を設定する。

 まず1時間目の「フランス革命」では、導入にもののながさの単位(センチ)を活用する。展開部分ではフランス革命の風刺画を生徒に提示して、フランス革命の成し遂げたことをつかませる。そしてフランス革命の遺産が現代に通ずることを確認する。最後に革命独裁が崩壊した後のことについて生徒に想像させて、1時間の授業は終わりとなる。

 2時間目は前回の続きからスタートする。革命独裁が崩壊してナポレオンが登場したことを確認し、「ナポレオンは革命の混乱をどのようにおさめたのだろう」という問いを発する。「革命の成果を守ることで人々に支持された」ことを確認し、その革命の成果は現代にも受け継がれていることに着目させる。最後にプラム=プディングを食べようとしているナポレオンとイギリス首相のピットの風刺画を提示して、生徒にナポレオンは「革命の成果を守ったが、広めていくやり方についてどう思う」と問いかけて、授業はまとめへと向かっていく。

 土屋は「近代化で生活や社会の在り方が大きく変化する先駆けは革命、世の中の覆りである」としている。「社会を変革したい、理想の社会を実現したいというさまざまな立場の人々の思いや考えが歴史を動かしてきたということができる」と述べる。

 

4.感想など

 率直な感想としては、授業の内容としては新しい学習指導要領の中身を反映しているが、方法としては伝統的な手法に終始しているように感じた。近代化を問う際にフランス革命が俎上にあがるのは当然のことのように思う。しかし方法としては、伝統的な教師主体の授業方法だと感じた。教師が敷いたレールを、生徒はなぞっていくような活動が多くなるような印象を抱いた。

 また、教材として風刺画を用いることはとても効果的だと思う。しかし活用の仕方は伝統的な手法を脱し切れていないと思った。順番をバラバラにして生徒に提示して、正しい順番に並び替えさせるなど、生徒主体のいわゆるAL型の活動を取り入れれば、よりよい授業になると思った。