君島和彦「歴史総合とはどのような科目か」
 (『歴史地理教育』880号、2018年、62~69ページ)

 

1.目次

1.はじめに

2.新科目設定の意味―「総合・探求体制」

3.新学習指導要領の目指すもの―「三つの柱」

4.地理歴史科の目標―社会科の復活

5.歴史総合の構造=決められた方の歴史教育

6.歴史総合の「歴史」-「テーマ学習」

7.歴史総合での歴史学習=歴史の学び方を学ぶ

8.具体的な歴史の学び方=ノートが使えない

9.どんな授業をおこなうのか=小学校の授業

10.おわりに

 

2.著者について

 本論文の著者である君島和彦は、2020年現在は東京学芸大学名誉教授である。名誉教授だからだろうか、学芸大の教員検索ではヒットしなかった。過去にソウル大学の歴史教育科正教授を務めた経験もあり、日韓の歴史教育に興味関心があるようだ。単著に『教科書の思想 日本と韓国の近現代史』 (すずさわ書店、1996年)や『日韓歴史教科書の軌跡 歴史の共通認識を求めて』(すずさわ書店、2009年)がある。教科書問題にも詳しい。

 

3.要旨

 2018年6月に刊行された『歴史地理教育』880に今回の君島論文は掲載されている。新しい学習指導要領が告示されたのが2018年3月30日なので、告示されてから間もなく書かれたのが今回の君島論文である

 君島が最初に強調しているのは、今回の歴史教育の改編が戦後日本の歴史教育の大改革であるということだ。チョーク&トークに代表されるような従来型の通史学習から、歴史総合は「歴史の学び方を学ぶ」科目となったと君島は述べる。

 今回の新学習指導要領がきわめて体系的で秩序だっている。新学習指導要領における地理歴史科の「目標」で共通する部分では、その前半部分は「主体的・対話的で深い学び」が求められており、同時に「3つの柱※」の「知識・技能」「思考力・判断力・表現力」を要約したものである。後半部分は、「学びに向かう力・人間性等」を「公民としての資質・能力」にまとめたものと言えるとしている。

 新学習指導要領における歴史教育では、諸資料の活用による主題学習(テーマ学習)が重視されており、「活動」が優先されている。設定した「主題」を「考察」したり「表現」したりするために必要な「歴史」を「歴史総合」では学ぶ。端的に言って、君塚は学習内容のレベルこそ違えど、小学校の授業を中学校、高校でも実施すればよいと述べている。今回の学習指導要領が求めているのは、知識より技能であると君塚は述べる。

 

※「3つの柱」とは、知識・技能、思考力・判断力・表現力等、学びに向かう力・人間性等