Fix bayonets !!!!
今回の授業実践は、本ブログの戦列歩兵に関する記事と軍事革命に関する記事、そしてミネルヴァ書房から2020年4月に出版された『論点・西洋史学』の166~167ページに掲載されている「軍事革命」の項目を参考にした。この書籍は世界史の授業の問いを考えるときにかなり有用だ。
本時の授業では、戦列歩兵による横隊戦術の出現について解説する。そして、このことと社会の変化について考察させる。最終的には軍事革命に関する3つの議論を紹介し、どの議論がもっとも説得力があるか生徒に判断させて表現させることを目標とする。
最初に前回までの復習(近世ヨーロッパについて)を簡単にペアワークさせたあと、このブログでも紹介したことのある映画「パトリオット」の戦場のシーンを視聴させる。そして、生徒に戦い方に注目させたうえで映像の感想を書かせる。どのような戦い方をしていたかをみせることで、生徒に18世紀の戦場の様子を理解させる。
簡単に何名か指名して感想を述べさせたあと、
T 「兵士が使っていた武器にはどのようなものがありますか?」
S 「銃、大砲…」
T 「兵士はそのほとんどがマスケット銃とよばれる小銃で武装していましたね。マスケット銃は、日本では火縄銃と呼ばれています。」
…のようなかたちで、兵士が銃を使っていたことに焦点を当てる。そしてマスケット銃について、①マスケット銃とは銃身にライフリングが施されていない先込め式の小銃のことを言うこと、②敵に致命的なダメージを与えられる距離は100m程度まで(ウサイン・ボルトが10秒未満で走り切る距離)であること、③マッチロック式やフリントロック式、雷管式など火薬への着火方式で分類されること、などを簡単に説明する。
次にプリントの2枚目で、マスケット銃の歴史を前時までの授業を復習しながら説明する。
① フス戦争(マスケット銃 前史)
フス派の指導者ヤン・ジシカは車両要塞を構築した。射手は、重騎兵の突撃やその他の攻撃を防ぎながら射撃に専念することができた。このことは「耕す人」の集団であり軍事的には貧弱であったフス派が、「戦う人」の集団であるカトリック勢に善戦した一つの要因となった。
② イタリア戦争(パイク・アンド・ショットの時代)
「戦う人」が軍事力を独占する時代は終わりに向かっていた。戦場の主役は重騎兵から歩兵へと移りつつあり、マスケット銃兵は長槍兵を援護する散兵として戦場で活躍した。スイスの傭兵やランツクネヒトなどが、ヴァロワ家とハプスブルク家の拳となって戦った。
③ オランダ独立戦争(マウリッツの改革)
オランダ独立戦争のさなか、ナッサウ伯マウリッツは軍の改革を行う。この改革は常備軍を設立して、兵士に規律を叩き込み訓練を繰り返すものだった。この「オランダ式」教練は、各国に輸出されることになる。このころにおぼろげながら戦列歩兵による横隊戦術が登場する。
④ 三十年戦争(北方の獅子:グスタフ2世アドルフ)
グスタフ2世アドルフは「オランダ式」に則ってスウェーデン軍を改革する。彼はマスケット銃兵による横隊戦術と、騎兵による突撃、そして大砲による支援砲撃の3つを連携して運用した。その結果、彼は北方の獅子としてバルト海帝国の礎を築き上げた。
…このような説明を加えながら、各戦争の対立軸や基本的な事項については生徒に答えさせながら、メモさせながら進めていくといいだろう。
次回に続く!
参考文献などは、次回の更新で紹介します。