過去と現在を結び付けてみよう!

 

 

 

 授業は男軍人 女は工女 糸をひくのも国のためという工女節の一節を考えるところから始める。

 

Q1.「糸」は何の糸…?

 「男軍人」という部分は、日清・日露戦争をすでに学習している生徒(高校生)にとっては分かりやすい部分だろう。そして彼らはおそらく中学までの学習で、工女という存在に触れたことはあるだろうし、その工女がなにを作っていたのか、糸=生糸というところまでは知っている。

 Q1についてはパッと確認程度に終わらせてしまっていいだろう。実物教材として、生糸や蚕、繭玉を持って行って、「今日のテーマはこれです」とやるのもいいだろう。

 

Q2.なぜ綿糸ではなく「生糸」を紡ぐことが国のためになったのか…?

 ではなぜ、生糸を紡ぐことが国のためになったのだろうか。生糸の原料は蚕の繭である。この繭玉や繭玉を作る蚕、蚕の餌となるクワの葉などの原材料が、生糸は国内で自給できるのだ。つまりこの答えは、生糸が外貨を最も効率よく稼ぐことのできる手段であったからだ。

 グループ学習でヒントをあたえながら話合わさせて、5分程度で結論を出させる。ここも知識の問題なので簡単にでいいだろう。

 

Q3.どうして「糸をひく」ことが「国のため」と考えられた…?明治後期における日本の諸産業のあり方を念頭において、5行以内で説明しよう…!

 このQ3の発問については、1984年の東大の入試問題を参考にしている。前半の「どうして「生糸をひく」ことが「国のため」と考えられた」の部分については、Q2で解答が出ているので問題ないだろう。ポイントは、「明治後期における日本諸産業の在り方を念頭において」という部分だ。キーワードは、「関税自主権」「国際競争力のある生糸」「富岡製糸場」あたりであろうか。1911(明治44)年に関税自主権が撤廃されるまで、日本に関税を決める権利はなかった。

そのなかで、生糸は前述した理由と工女という安価な労働力のために国際競争力があった。そして官営模範工場の富岡製糸場を設立し、蒸気力を利用した機械による製糸の生産にあたった。

 ここまでは解答のある発問である。Q3については教科書の該当部分をまとめる程度でいいだろう。ここまでは「現在の人」として「過去」の製糸産業について理解する、といった内容であった。

 

Q4.「国のため」に「糸をひ」いた工女たちの生活はどのようなものだった…?参考プリントを読んでみよう…! 

 ここからは生徒を「過去」に近づける発問になる。資料は角川文庫からでている『あゝ野麦峠 ある製糸工女哀史』から引用した、製糸工場の朝の場面とそれに続く2つの事件の場面である。資料を読ませて、感想や意見、コメントを教室内で共有する。

 

Q5.【現代の労働問題】と比較して、同じところと違うところをレポートにしてまとめよう…!

 再び生徒を「現在」に引き戻して、過去と現在の労働問題を比較してレポートを書かせる。今回は現在の労働問題として、ブラックバイトの問題を提示した。以下のようなルーブリック評価表をつかって評価する。

 

 

 

 

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