今年(2019年)のはじめのころのことだったと思う。浜辺に打ち上げられたクジラの胃の中から大量のプラスチックごみが見つかり、死因がそのゴミによる窒息死だったというニュースを見た( 【動画】餓死したクジラ、胃にビニール袋80枚 )。

 

 現代社会の教科書は、最初に地球環境問題について取り扱っている。その一環として、「プラスチックごみ」の授業を考えた。

 

 高校生はスターバックスが好きだ。16時頃になると、とくにテスト前の時期になると高校生は大挙して駅前のスターバックスに集結して、各々がテスト勉強をしている。今年の初めころ、そのスターバックスが環境問題に対応するための取り組みの一環として使い捨てプラスチック削減キャンペーンをスタートさせた(スターバックス)。

 

 生徒の身近なものと地球環境問題とがリンクするいい教材だと思い、導入でビニール袋を「今日の授業はコレです」と提示して前述したスターバックスの話をして、次リンクの記事を読ませた後で、以下のようなワークシートを使って1時間の授業を展開した。

 

 ワークシートとしては極めてオーソドックスなものである。Q1で記事の内容を要約させ、Q2でプラスチックの利便性について考えさせる。生徒からは「加工がしやすい」とか「軽い」、「固くもなるし柔らかくもなる」といった声が聞こえた。Q3ではそのように便利で、かつ安価なプラスチックがごみとしてどのように地球上に存在するのかを説明した。

 Q4とQ5では、このようなプラスチックごみをめぐる状況に対してどのように対応することができるかを問うた。Q4では国家として、Q5では個人としてどのようにプラスチックごみを削減できるか発問した。

 

 今回の実践の主目的は、生徒に「プラスチックごみの問題について考えさせる」ことであった。Q1からQ3まではある程度うまく言ったように思える。生徒がスターバックスやビニール袋のような身近な事物から、プラスチックごみの問題という地球環境について考える動機付けができたように思う。

 しかし問題はQ4とQ5である。生徒は小学校、中学校と義務教育の段階で地球環境問題、とりわけエコロジーの問題について重々学習してきているのである。そのため、Q4とQ5ででた生徒の答えは、「ビニール袋に税金をかける(Q4)」や「エコバックをもつ(Q5)」といった教科書通りの回答が多かったように思える。本時の学習ではプラスチックごみの問題について認知させること以上の深みを出すことができなかった。

 

 端的に言ってしまえば、高校生が議論するには今回の主発問(Q4,5)はあいまいであった。もっと問題を具体化して、例えば「記事で読んだようなクジラの死を防ぐためにはどうすればいいか」や「あなたが飲み物屋さんのオーナーだったとしたら、安価だが環境にやさしくないプラスチックストローを使い続けるか、それとも高価だが環境にやさしい紙ストローを使うか」のような主発問がよかったかもしれない。