帯に書いてあるコメントが気になって手を取りました。
八年前に別れた黒崎を忘れられない十和子は、淋しさから十五歳上の男・陣治と暮らし始める。下品で、貧相で、地位もお金もない陣治。彼を激しく嫌悪しながらも離れられない十和子。そんな二人の暮らしを刑事の訪問が脅かす。「黒崎が行方不明だ」と知らされた十和子は、陣治が黒崎を殺したのではないかと疑い始めるが…。衝撃の長編ミステリ。(内容紹介より)
とにかくまともな登場人物がいない!
それが読んでいて強く感じたこと。
読んでいて嫌な気分になるのに、離れられず最後まで気になってのめり込んで読んでいた。
十和子と同居している陣治がどれだけ生理的に受け付けられない男性なのか詳しく書かれている。
確かに、近付きたくない!って思える男。
性格が嫌だとかじゃなく生物として嫌悪感を抱く男だって感じさせられた。
手から円盤の形したパンがペンって落ちる
という描写があるんだけど、そこが陣治が不潔で下品で卑屈で滑稽な人間なんだということがうまく表されていると思った。
そんな陣治をいじめることでしか自分を保てない十和子だって十分嫌な女だと思う。
特に家事をするわけではないのに陣治の働いてきたお金で自由に暮らして、ご飯も作ってもらってマッサージまでしてもらって、、、
そこまでやってもらっている陣治をなぜそこまで、貶めることが出来るのか?
そんな嫌なら別れて離れて暮らしたら?って言いたくなる。
しまいには、浮気しちゃうし。
そんな、十和子を愛し続けて自分を犠牲にする陣治。
恋なのか愛なのか何なのかよく分からない2人の関係だった。
そして、サスペンス的な要素があるのには驚いた。何がホントなのか真実は何なのか分からないのが面白くてページをめくっていた。
沼田まほかる、さんはユリゴコロで知りました。
もしかしたら誰もが心の中に持っている、人間の嫌な怖い部分を描くのがうまいなって思った。