◎鎮魂祭(ちんこんさい)
体から離れようとする魂を体に押し留め、延命を祈るお祭り。古代・中世には、天皇・皇后と皇太子の御魂を鎮めるために十一月に行われていました。現在も宮中では、綾綺殿(りようきでん)という場所で同様の儀礼が行われています。鎮魂祭は、宮中に祀られる神魂(かんむすび)、高御魂(たかみむすび)、生魂(いくむすび)、足魂(たるむすび)、魂留魂(たまるむすび)、大宮女(おおみやのめ)、御膳魂(みけつたま)、辞代主(ことしろぬし)の八柱の神様と大直日神(おおなおびのかみ)を祀りおこなわれます。琴、笛にあわせて鎮魂の歌が歌われ舞踏が行われます。これに合わせて「玉の緒」(たまのお)と呼ばれる木綿(ゆう)を結び、天皇の衣箱のふたを開いてゆり動かします。これは、霊魂をゆすり力を強め外から魂を招く動きと、離れていこうとする魂を身体の中に押し留める動きが混ざった所作とされています。宮中のほか、奈良県の石上(いそのかみ)神宮、新潟県の弥彦(いやひこ)神社、島根県の物部(もののべ)神社などでも鎮魂祭が行われています。
【参考文献】
安津素彦「鎮魂祭」(安津素彦・梅田義彦監修『神道辞典』堀書店、昭和四十三年)
沼部春友「鎮魂祭」(『世界大百科事典』平凡社、昭和六十三年)
並木和子「鎮魂祭」(國學院大學日本文化研究所編『神道事典』弘文堂、平成六年)