◎「恐み恐みも」の「も」の意味
「恐(かしこ)み恐(かしこ)みも白(まを)す」は、恐れ謹んで申し上げます。の意です。「も」は、一般に、余情を含んだ詠嘆・感動的表現に用いる係助詞とされています。
しかし、実は、さらに深い意味が込められているのです。
「恐み恐みも」の「も」はどのような意味を添えている助詞であるかについて、鎌田純一先生(皇學館大学名誉教授・元宮内庁掌典・宮内庁侍従職御用掛)の貴重なお話があります。専攻科同窓会の宴の場で、直接お伺いしました。
今上陛下が即位の礼・大嘗祭を何時行いますということを宮中三殿に御自ら奏される「期日報告の儀」(平成二年一月二十三日)にあたりまして、御告文(陛下御自ら読まれる祝詞)の中の「恐み恐みも申さく」の「も」はどういう意味か、と疑問を持たれました。
その御下問を侍従を通して、鎌田先生が伺い、皇學館大学の西宮一民先生(元学長)にも質問をされ、陛下に回答されました。
その「も」の意味は、
自省(自ら反省する)の助詞、すなわち、恐れ謹んでいるつもりですが、ま
だ足りませんでしょうか。
とのことです(鎌田純一先生「宮中祭祀について」『礼典』第三十号、平成八年四月)。
このような深い意味が「も」にあるのです。
陛下があ、祝詞の一字一句をおろそかにされず、意味をご理解になって奏上されていることを承知しましょう。まさに陛下の祭祀厳修の御姿は我々神職の鏡であると思います。