その頃には、
異国である緊張感や警戒心はなくなり、
むしろ開放的な気分になっていた。

ぼくらはスクーターに二人乗りで、
大通りを疾走していた。

そして、目的地に向かうため、
大通りから左に曲がり、
片道一車線の細い通りに入った。



曲った通りには、警察官が、
20メートル先に1名、30メートル先に2名いた。



そして、20メートル先の警察官が、
僕らの前の車を手招きしている。

「何か違反でもしたのかな。。。」

と思い、そのまま直進していくと、
前を走る車は警察官の横をスルーした。。



『おいおい、逃走かよ。
トラブルは嫌だよ、まったく。。。』



しかしながら、依然として警察官は未だ手招きをしている。




「??」



ってことは・・・



手招きされてるのは、ひょっとして・・・



『俺ら??』



よーく考えてみたら、



俺ら国際免許証も持ってないし、
ヘルメットの義務があるのに、
ふたりともヘルメットもしてない。。。

しかも、タイの警察官はなん癖つけて、ワイロを要求してくるらしいし。。。
(ワイロは間違った考えだと思うが、当時はそう思っていた。)



東京大学物語の村上くん(!?)みたいに賢くないので、

『やばい!逃げろ!!』

って気付くまでに、1秒近く掛かってしまった。
この時間が命取りだった。



慌てて、ハンドルを右に切り、
Uターンの体勢に入った。
それと同時に、警察官はこちらに向かって、走り始めた。



僕らとタイコップの距離はもう10メートルを切っている。



バイクのUターンというものには、
それなりに時間がかかるものだ。

『そんなに焦らせないでくれよ』

と思うが、
そんな気持ちにはお構いなしに、
警察官はもう間近。



Uターンが完了しようとする頃、
おそらくその警察官は手を伸ばせば、
僕らを捕まえられる距離。



Uターンが完了する直前に見えた警察官は、
宙に浮いた。



『なんだ!?』



『・・・』



『ジャンプキックだ!!』



そこからは、まさにマトリックスの世界。



だんだん近づいてくるタイコップの足。

Uターンを終え、加速を始めた僕らのバイク。



『っていうか、手で捕まえられるじゃん!!』



なんてことも頭をよぎりながらも、
マトリックスの世界は続く。



バイクのアクセルをめいいっぱい振り切り、
加速を続けるものの(実際コンマ何秒の世界)、
ジャンプキックも迫ってくる。



『もうだめだ、当たる!!』



という寸前で、
ムエタイで鍛えただろうタイコップのジャンプキックを
コンマ何センチの距離で、遂にかわした。



『勝った。。。』



またいつものように、
優越感と満足感に浸りながら、
大通りに戻った僕らを待ち受けていたのは、、、



エージェントスミスかのごとく、
増殖したタイコップたちだった。



普通に言いかえれば、
大通りを左に曲がったら、
警察官がまた4人もいたんです。



さっきの反省を活かし、今回の判断は早かった。



『とにかく逃げるんだ!』



今度はさっきと違い片道3車線の大通り。

『これじゃUターンできないでしょ!!』

左折して大通りに戻ったから、大通りの一番左車線。



つまり、Uターンして、向こうの反対車線までいくのには、
2車線越えないといけない。



『無理無理!!!!!!!!』



じゃあ、右がダメなら左とばかりに、
左を見ると、大きめの歩道が。



『こうなったら、歩道しかない!』
(ちなみに、国道(みたいな大通り)のためひとは歩いていない。)



左にハンドルを切り、Uターンをかまし、
歩道を延々と逆走して、逃げたわけですが。。。







今、12年経って思えば、
なんと危険というと、周りのひとに迷惑がかかる話で、
ほんと説教もんです。


まあ今日のとこは若気の至りということで勘弁。。。






(つづく)