ここまで思い出したところで、はたと気づいた。
大した話はしていなかったが、子供の頃何も考えず、
心をさらけ出して話していたのはおばちゃんだけではなかったか?
自分はおばちゃんはただのお手伝いさんだと思っていたが、
心をさらけ出して、言いたい放題言って一番甘えていたのは自分ではなかったのか?
それに気がついた時、とめどもなく涙が溢れだしてきた。
おばちゃんはそれに気づいていた。
気づいていて、おばちゃんなりにしっかりと受け止めてくれていたのだ。
「そんなこと今更わかったのか?」
心の中でその言葉がこだまする。
僕は何もわかっちゃいなかった。
自分にとって『優しいお母さん』の存在はおばちゃんだったのだ。
日の落ちかかっている夕方、
おばちゃんは少し前かがみに歩きながら、ゆっくりと帰っていく。
「おばちゃーん。」
と僕が声をかける。
黄昏時のやわらかい光に包まれながら、おばちゃんは静かに振り返り、
「あっちゃん、じゃあね。また明日ね。」
と言った。
そこにはいつまでも全てを包み込んでくれるようなあたたかい微笑みが漂っていた。
おばちゃん、ありがとう。
おわり
