話は数日前に遡る。
妹が少し急いたように部屋に入ってきた。
「野崎のおばちゃんが亡くなったって。」
「いつ?」
「おとといだってさ。林さんがお母さんに教えてくれたんだって。」
おばちゃんは僕が小学校に入った頃くらいから、うちのお手伝いさんをしてくれていた人だった。
「通夜はいつ?」
「今日の夜6時からだって。」
「そうか。わかった。」
僕は毎朝仏壇の前に座りお経を読み、
野崎さんをはじめとする今までお世話になった人を思いながら感謝の言葉を口にしている。
僕はおばちゃんのことを考えていた。
おばちゃんはいくつだったんだろう?
そうなのだ。
僕は小さい頃からとても世話になっていたのに、
おばちゃんのプライベートを知っているのはほぼ皆無といってよい。
無口な人ではなかったが、ほとんど自分のことはしゃべらなかったような気がする。
そろそろ通夜に行く時間が差し迫っていた。
「もうそろそろ通夜の準備をしないと・・・?」
と母が訊ねてきた。
「今日はやっぱいかない。」
と答えた。
そして妹が通夜に出て行った。