二章 【無限の世界へ】 9 (19) | 中華の足跡・改

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横石は徹司と古兼を等分に見て、

「ちょうどよかったぜ。ちょっと柏でゲームやっていかねぇ?(しゅん)誘ったのに、行かねえってんだもん」

「いやあ俺、ゲーセンってあんまり好きじゃないから」

と、後藤が弁解するように言う。

横石はそんな後藤の肩をぽんとたたいて、笑った。

「まあ実は俊と行ってもしょうがないんだけどな」

そしてまた徹司たちを見て、続けた。

「ちょっとこの前、新しい連続技練習したからな。勝つぜ、今度は」

徹司は古兼と視線を交わして、軽く肩をすくめた。

「やれやれ、熱心なことで」

古兼が続けて、

「まあ、たぶん無駄だけどね」

と、挑発するような口調で断言する。

「んだと、コラ」

と横石はあっさりとその挑発に乗ってくる。

そこで後藤が、

「なに、何のゲーム?」

と口を挟んできた。

それに答えて解説を始めたのは横石だ。

「ファイティングバイパーズっていうやつで、3Dの格闘ゲームさ」

「3D?じゃあバーチャファイターみたいな感じかな?」

「ああ、よく似てる。なにしろ作ってるメーカー一緒だからな」

横石は解説を続けた。

「もともと剛志がやってるの見て、おもしろそうだからやってみたら、すっげえハマっちゃってさ。でも剛志はともかく、俺と同じ時期に始めたはずのモモもなんか上達早くて、あんま勝てねえんだよな」

横石が嘆いたように、徹司・古兼・横石はよくこのゲームで対戦するのだが、横石の勝率は明らかに悪い。

徹司に言わせれば、横石の戦法は単調で攻め方のパターンも少なく、そうそう負けやしねえよ、というところなのだが。

「というわけでさ、行こうぜ。徹司も剛志も、ヒマだろ?」

と、横石は再び誘いをかけてくる。

徹司にしても、決してこのゲームが嫌いではないし、横石の誘いに乗るのはやぶさかではないのだが、正直なところ今は古兼から話の続きが聞きたかった。

が、この場ではそうはいえない。

まあ、この先いくらでも話をする機会はある。

ちらりと古兼を見ると、どうやら古兼もその意を察したようだった。

古兼は軽く頷くと、えらそうに横石に告げた。

「よかろう、相手をしてやろう」

「けっ、大口叩けるのも今のうちだぜ」

柏駅で徹司らは後藤と別れ、電車を降りた。

柏駅周辺には、徹司の知る限りでも10を超える数のゲームセンターが存在している。徹司たちがよく行く場所はそのうちの一つで、「イルカ」の名で呼ばれるゲームセンターである。

入り口を入ってすぐのところに「ファイティングバイパーズ」の対戦台が置かれている。

ゲーム界において、こういった『対戦格闘』というジャンルのものは、近年目覚しく発展している。火付け役は、格闘ゲームの代名詞ともいえる「ストリートファイターⅡ」であろう。

一台のゲーム機をはさんで友人同士、あるいは見知らぬ人と対戦し、負ければその場で終了、勝った者のみがゲームを続行できるというシビアな世界だが、それゆえに多くのユーザーが強さを求めてゲームに没頭した。そして、上級者の間では、「どのように勝つか」や「かっこいい連続技」といったギャラリー受けを狙った要素も追及されるようになる。

さらには、対戦格闘物の進化と共に、数多くの専門用語が生まれ、また対戦時の暗黙のルールなども築かれていくのだった。

「お、空いてる空いてる」

と、横石がさっそく席に座り、50円を投入してゲームをスタートした。

横石がいつも使うキャラは、エレキギターで相手を殴ったり突いたりする、パンクロッカーキャラである。

「さ、かかってこいや」

「ほんじゃ、お先に」

と、古兼が向こう側の席に回り、50円を入れて『乱入』する。

徹司はのんびりと両替機に千円札を入れながら、二人の対戦を眺めた。

古兼は複数のキャラクターを使いこなすが、今回選択したのはスケボーを武器代わりに振り回すキャラである。

「Round1 Fight!」

戦闘が始まった。