北海道民は、一般に、暑さに弱い。
そして、寒さにも弱い、という。
意外といえば意外だが、それも故あってのこと。
冬になるとほとんどの人は、屋内ではガンガン暖房を使い、Tシャツでも過ごせるくらいの温度にする。
外出時は車を使うことが多い。
そんなわけで、寒さに耐えるということが少ない――と、いうわけである。
そして、もうひとつ。
そういう面での、「もったいない」という意識が、希薄である。
寒けりゃ暖房、暑けりゃ冷房。
単純というか、合理的というか。
良くも悪くも、そういう特徴がある・・・と、俺は思う。
冬でも、耐えられる限りはぎりぎりまで暖房をつけない俺とは根本的に何かが違う。
去年の冬は結局一度も暖房をつけなかった――という話をすると、道民はみんなびっくりするのはそのせいか。
前置きはそのくらいにして。
先日、札幌ドームに行くときに、バスに乗った。
試合のときは、最寄駅の真駒内から、ドームまで臨時シャトルバスが出るのだ。
駅前に留まっていたそのバスに、俺が乗り込むと。
出発を待つ客で、バスの中はそれなりに混んでいた。
このたくさんの客のほとんど全てがファイターズファン、のはず。
つまりは全員、敵だ。
四面楚歌だ。
今に見てやがれ、球場で黙らせてやる。
・・・とまあ、そんな勝手なことを考えて、ひそかに闘志を燃やしていたのだが。
乗客の一人、50代くらいの一人の男性が、運転席のほうまで歩いていって、言った。
「暑いんで、エアコンつけてもらえませんか?」
そんな話が聞こえてきた。
そういえば、車内、ちょっと暑いかもしれない。人の密度が多いせいか、蒸している。
といっても、大騒ぎするほどのものでもない。
と、俺は思っていた。
「すいません今エンジン切ってるので・・・走り出したらエアコンつけますので」
と運転手が答えた。
すると、別の席に座っていたやはり年配の男性客が、
「じゃあエンジン掛けろよ!」
と、大声でどなった。
なんだこのジジイは、と、俺は眉をひそめてそちらを見やったのだが、意外なことに他の客は、もっともな意見だとでもいいたげな表情をしている。
運転手は、無視することにしたらしい。
出発まであと5分ほどあるようで、それまではエンジンを止めておくことになっているのだろう。
それが当然だ、と、俺も思う。
真夏や真冬でもあるまいし、この季節のまだ午前中だ。
それも、バスが走り出すまでの数分間。
我慢できない道理はあるまい。
ガキじゃあるまいし。
どうも北海道という地域は、地球環境にはやさしくないようで・・・。