昼休み。
いつものように松屋で豚メシを注文し、カウンター席に座った。
コの字型になっているカウンターなので、向かい側が普通に見える。
メシを待つ間、ぼんやりと向かい側を見ていた。
この日座っていたのは、欧米系にみえる外国人の、30代くらいの男二人。
ロシアっぽく見えなくもない。
二人とも何かの定食を頼んだようで、ちょうど食べ始めるところのようだった。
このうちのひとりが、妙なことをはじめた。
カウンターテーブルの上には、各種調味料が並んでいるのだが。
まず、こしょうをとりあげ、味噌汁にふる。
次に七味唐辛子も、味噌汁にぶち込む。
そして、しょうゆかソースかちょっとわからなかったが、ともかく黒い液体もやはり味噌汁へ。
このあたりでたいがい見てるこっちも気分が悪くなってきた。
が、彼は続いてフレンチドレッシングをとりあげ、容赦なく味噌汁へ。
隣の席の彼の友人は、いつものことで慣れてるのかどうなのか、なんのリアクションもなく、自分の前のサラダをスプーンでかきまわしている。
スプーンでサラダは食いにくそうだな、と、なんとなく現実逃避したくなるような気分で俺は考える。
さて、味噌汁虐待を続けていた彼は。
既に味噌汁と呼ぶのは味噌汁に対する冒涜のような気がする『その液体』を、ぐるぐる混ぜたあげく、ご飯の上にざばっとぶちまけた。
仕上げとばかりに、定食のデミグラスソースをそこに流し込む。
これで、ようやく完了らしい。
平気な顔をして食べ始めた。
そしてここでようやく、俺の豚メシがやってきたわけだが。
なんだか、ひどくうんざりしてしまっていた。
俺の食欲を返せ、と、彼に言ってやろうかとも思ったが、何語で言えばいいのやらさっぱりわからなかったので、やめておいた。
まあ好みは人それぞれだろうけどサ。
限度ってもんがあるだろうに・・・。