酢のお話 | 中華の足跡・改

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先日、友達と中華料理を食べていたときに。

その友達が、何気なく、『酢』を自分の料理にかけて、食べていた。


中華に酢という組合せが絶対的なものなのかどうか、そんなことは知らないが。

杭州にいたときも、よく酢をぽたぽた振りかけて食べている友達がいた。

単なる酢好きなのかもしれないが。


さて、その『酢』だが。

俺が杭州で、あるいは一番お世話になったかもしれない外食ドコロは、「蘭州拉麺」というチェーン店(?)で、お世辞にも綺麗とはいえない店ながら、なにせ安いし味も悪くないので、ちょくちょく使っていた。

そんな店にも、しっかり酢は用意されている。


その店で、俺のお気に入りは炒拉麺というもので、あえていうならスパゲッティナポリタンを中華風に豪快かつ適当に作ったようなシロモノである。

気分しだいで牛肉やら卵やらの具を付け加える(気分的に「トッピング」という単語を使いたくない)。

ボリュームもけっこうあって、6~7元(100円しないくらい)で食えるので、なかなかよろしい。


で、ある日。

その日は一人で店に行って、その炒拉麺を注文した。

待つことしばし。

そしてやってきたモノは。

――何かが違う。

2秒ほど首をひねり、そして気がついた。

色が、白い。

そう、この料理は、ぱっと見がオレンジ色っぽくみえるはずなのに。

ということはなんだ、そのソースのようなものを入れ忘れたってことか?

そんなことがありうるのか?

素人でも見た目ですぐに気がつくというのに。


とにかくも、店のおばちゃんに言う。

「ちょっとこれ、なんか・・・白いんですけど?」

するとおばちゃん、ごく普通の調子で答える。

「ああ、いまちょっとソースをきらしちゃっててね」


ほう。

それで、未完成品を何も言わずに客に出すわけか。

「ちょっと待ってよ、そりゃあないでしょ」

「ごめんねぇ、いつも届けに来てくれるヒトが来ないのよ」

・・・理由なんて訊いてねえよ。


なんだか、ナニをいってもムダ、という空気が狭い店内に充満している。

もっと食い下がっても良かったのかもしれないが、まだ留学初期の頃で、とっさの判断もつかなかった。

ぽんぽんとケンカするようになったのはまだ先の話だった。

というわけで、仕方なくソレを食べてみる――が、予想通り、味が極めてうすい。

「・・・味がしないんだけど」

と、半ばヤケで訴えてみると、おばちゃんから意外な答えが。

「じゃあ、酢でもかけて食べれば?」


ここまで堂々とされると、抵抗する気力も失せる。

やむをえず、俺は卓上の酢を取って、いつもより多めにふりかけてみる。

別に、酢が嫌いなわけではない。

ない、が。

――さすがに無理があった。

もったいないのでがんばって食べたが、半分くらいが限界だった。

酢はあくまで酢。

味の中心とは、なりえないらしい――どうやら。


ま、時折そういう痛い目をあわせてくれる蘭州だけど、その後も結局使い続けたわけで。

いまだに時々食べたくなったりするわけだ。

・・・日本進出しないかなぁ・・・。