回想・2005年 ~ 八月 | 中華の足跡・改

中華の足跡・改

中国から帰り、北海道に暮らしつつ、台湾とつながる生活。

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帰国目前、というこの時期は、以前のような不安定さは影をひそめてきた。

開き直り・・・ということもあったかもしれないが。

ともかく、残された日々を楽しく生きなくちゃ・・・と、どこかで決心したわけだ。


最後の一週間は、おかげでだいぶ楽しく過ごせた。

大切な友人たちとの、最後の晩餐を繰り返す。

まったく・・・俺は、友人に恵まれたものだ。


最後の――出立の日。

一人、朝の散歩に繰り出す。

そして、携帯電話を取り出して、保存してあった短信(メール)の数々を読み返す。

30通程度の保存能力しかない携帯なので、不要な短信はどんどん削除しなければならないのだが、個人的に大事な短信は、ずっと取ってあったのだ。

それを、何度か読み返して――ひとつずつ、消していった。

過去との決別、なんてかっこいいものではない。

散文的な事情から言えば、この携帯を友人に譲ることにしていたので、短信を残してはおけない、ということがあったのだが。


ひとつ、またひとつと、記憶が呼び覚まされ、そして消えてゆく。

今でも思い出し笑いしそうになる記憶。

ほっとするような微笑が浮かぶ記憶。

わずかに苦いものが混じる記憶。

思わず心をときめかせた記憶。

・・・短信が消えても、刻み込まれた記憶はきっと、消えない。

それなのに――。

どうしてだか、そのとき俺は、泣きそうになっていた。


――こうして俺は、思い出の詰まった中国大陸を離れた。



日本に戻ったら戻ったで、また慌しい生活がまっていた。

多少は実家でのんびりしたい気分ではあったが、就職先の会社からは、できる限り早く来てほしいとの要望があったので、あまりゆっくりもできない。

帰国して一週間後には、俺は北海道へと(正確には、フェリーに乗るために新潟へ)バイクを走らせていたのだった・・・。


以後、俺の生活の場は、北海道へと変わる。

同時に、学生から社会人へと身分も変わったわけだが――まあこれは、二度目ということもあるので、新卒のときとはまただいぶ気分が違うものだったが・・・。