既に全ての授業を終えた、育櫻日本語学校。
とはいえ、全部の縁が切れたわけではもちろんない。
人と人とのつながり――簡単には切れない。切らせはしない。
最後の記念に、講師陣で一日遊びの企画が出た。
もっとも、今回の企画に関しては、俺はほぼノータッチ。例の日本語の先生と、来期交流会会長達にまかせっきりだった。
昼間は、バーベキュー。
西湖のほとりの木陰の中で。
晴天、そよ風、文句なし。
羊肉の串焼き。手羽。イカ、ピーマン、たまねぎ、とうもろこし、バナナ、もち、などなど・・・。
うん。
いいね。ビールとよく合う。
そのあとは、なぜか百人一首などをはさみつつ、カラオケへ。
何度もいったカラオケだが、案外これで最後になるかもしれない。
一日の遊びが終了し、道具などを置きに一度みんなで日本語学校へ戻った。
さんざん世話になったこの学校・・・思いもよらない最終幕は、この教室で始まった。
一人、空き教室にぽつんと取り残された俺の下へ、一人ずつやってきては手紙を読み上げていく。
なんだろ、このシチュエーションは。
友人たちの想いが、一つまた一つと、心へ刻まれてゆく――。
まだ、最終幕は続く。
次は別の教室にその場のみんなが集まり、なんだか席に着く。
そして、先生が言うには――「最後ですから、記念に、授業形式でやってもらいましょう」。
・・・え・・・?どうしろと・・・?
別の人のフォローによれば、つまり感謝の気持ちをあらわしてみろ、と。
なるほどね、そうきたか。
つまりこのシチュエーションは――泣け、と。
そういうことですか?
・・・うーん期待に添えなくて申し訳ない。
人前では、そう簡単に泣かないのだよ、この俺は。
男の子は泣いちゃいけない、と、そう育てられてきた――というわけじゃないんだけどね、別に。
それでも。
感動したことに、間違いはない。
彼らはそんな俺に、さらに追い討ちをかける。
――数々の思い出の写真を加工して貼り付けてある、オリジナルアルバム。
――そして、「あの歌 」の、合唱。
・・・そこまで、してくれるか。こんな俺に。
どうして、こうまで――この世の中は、楽しいんだ?
俺は――こんなにもたくさんの幸せをもらって、いいんだろうか?
震える心。そして湧き上がる歓喜。そう、このときの俺を支配したのは、よろこび。
天を仰ぎ、両手を広げ、叫びだしたくなるような、このよろこび。
楽しい。楽しい。
――これが、俺の人生・・・!おもしろい、おもしろいぜ!
さあ、叫べ。こころゆくまで・・・。