
「大使たち」というタイトルの、あまりにも有名なこの絵。
ナショナル・ギャラリーを訪れた時、この絵の周囲に中学生か高校生くらいの学生さん達が座って、講義を受けていた。
講師の先生は美人の若い女性で、時々ジョークをまじえながら軽快にトークをしていた。
「…この絵、とても大きいわよね、(縦×横2メートル程度)
大きい絵というのはとてもインパクトがあるのね。それに、とても高価だったの。
ところで、この絵に描かれてる人物だけど、歴史で習ったかな。
この左の人物、誰かわかる人!?(片手を挙げる)」
うつむく生徒達。一同ボソボソ囁く。
「ヘンリー8世?」「違うよ」「誰だったっけ」
その時、左はじに座っていた一人の男子が
「せんせー、コイツ知ってます」
と、横にいる友達の手を掴んで挙手。
「ちょ…なにすん!?」というかんじの友達。
先生「じゃ、君答えて」
男子「えと…ジェームズ…」
先生「残念、フランス大使よ(笑)? 正解は、ジャン・ド・ダントヴィルね」
傍で見ていて笑ってしまった。
いや、いい友達を持ったな君は。
ギャラリーでは、他にも黙々と模写するオッサン(正直、あまり上手くない…)
ターナーについて講義を受ける小学校低学年くらいの団体、
他にも学校の授業で来たのだろう、同じプリントを手に持って、レポートを埋めている学生達を見た。
「この時間で半分も書いてないの? どーすんの」
「それ写していい?」
多分、絵の感想か何かのようだが…随分苦労していたようだ。
こういう美術教育は日本でもどんどんやってほしいな、と思いながら見てまわった。
大勢の人の手で成ったオタク向けのアニメやゲームの画像でなく、
一人の人間が時間をかけて心血注いだ作品、というものも、日本の子供達はもっと知ってていいはずだ。
楽しい解説をしてくれる人が、もし吉本あたりのお笑い芸人にいたらな…と
そんな事も考えた。
いろんな象徴的意味や、謎解きを含んだホルバインのこの絵「大使たち」や
同じく、同美術館にあるブロンツィーノの「愛のアレゴリー」はやっぱり人気だった。
「ダ・ヴィンチ・コード」のせいか「岩窟の聖母」も人だかり。
なんだよ、結局どこの人も、絵を読み解いて楽しんでいるんじゃないか。
岡本太郎は「絵は謎解きではないのです」と言ったけれど
想像力で会話するには、エネルギッシュな想像力が必要だ。
ふっと疲れた時、人の側にあって優しい宗教画や
あるいはミステリー小説さながらに知と謎の世界に誘う寓意画も
もちろん、絵としてあっていい。
おととい友人から、エゴン・シーレの言葉をメールでもらった。
「僕は思う。"現代的な"芸術などありはしない。在るのはただ一つの芸術、
永遠に続く芸術だけである」
絵を見ているのは人だ。
人の側に無くて何が芸術なのか。
人をつなぐものが、芸術を永遠にする。