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本日、日本を代表する言語学者鈴木孝夫氏の著書『ことばと文化』を参考して、あらわな文化(overt culture)とかくれた文化(covert culture)について考えてみたいと思います。

 

 

 

 

鈴木孝夫氏によれば、ある国の人々の生活や考え方を隅々まで支配している、その国の文化というものは、そこに生まれ育った人々にとっては、空気の存在と同じく、元来自覚されにくいと言います。

 

また、鈴木孝夫氏によれば、文化にはあらわな文化(overt culture)とかくれた文化(covert culture)があります。

 

前者は、比較的目に着きやすい、顕在的な文化です。

具体的な例としては、日本や東アジアでは箸を使うが、欧米ではスプーンやナイフ、そしてフォークを用いることがこれに当たります。

 

後者は、目に見えにくい、なかなか気が付かない文化です。

これについて、鈴木孝夫氏は、下記の図1を用いてスプーンでスープを飲む実例を取り上げて説明しています。

 

 

              図1(出典:鈴木孝夫『ことばと文化』岩波新書、1973年)

 

 

日本人は、スプーンでスープを飲むとき、スプーンを顔と平行になるような角度で、口に持って行き、吸い込むようにして、液体口に入れます。

それに対して、西洋人は、スプーンを顔と直角になるように近づけ、スプーンの先端から飲みます。そのとき、吸うのではなく流し込むようになるため、スプーンの先が、口の中に相当入りに込むことになります。

 

上記の文化の比較をしたうえ、鈴木孝夫氏は下記のように述べます。

 

文化の項目としては全く同一のスプーンを使いながら、日本人と西洋人との間には、ちょっと人が気付かない構造的なちがいが見られる。文化というものは、このような、当の本人が自覚していない、無数の細かい習慣の形式から成立しているものであって、このかくれた部分に気付くことこそ、異文化理解の鍵であり、また外国語を学習することの重要な意義の一つはここにあると言えよう。

 

 

参考文献

鈴木孝夫『ことばと文化』岩波新書、1973年。