☆『 老人と花 〜掌編小説⁉︎☆①


皆様✨こんにちは❣️

掌編小説シリーズ🌟の新作が出来ました💕

どうぞ、御覧下さいませ✨
(๑•ω•๑)/"♡




🌟 老人と花



私は、身寄りのない老人だ。


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今日まで暮らして来た。


ここで、幾ばくかの余命を待っている。



病に伏せ、ここに運ばれて来て、


もう…3年になる。


『せいぜいあと、1か。』



独り、真面目に生きて来た。


ただひたすら、真っ直ぐに。


真っ当な道を歩んで来た。



世間様に顔向けできない様な事は、


何もしていない。



私には、"家庭"がない。



時折、兄弟家族が見舞いに来てくれた。



だが、血縁なんてモノは…


各々、家庭をもってしまえば、


縁遠いモノ。



素直に嬉しい


なんていう気持ちは、もう湧かない。



誰かが見舞いに来てくれると


次は、いつ来るのか?


などと、愚かな期待をしてしまうからだ。



これまで、何度も期待をした結果


がっかりとさせられる始末だった。



可哀だな。



だから


"喜び"という感情を


私は、とっくの昔になくした。



だが、見舞の際に持ってきてくれる


""は、不思議と心が落ち着いた。



世間様は、梅雨に入り、

1日中、雨が降り続いた。



私は、雨が降ったり、止んだり、

コロコロと変わるお天気の顔色を伺うのは、わりと好きだった。



同じ事の繰り返しは、


うんざりとしていたのだ。




紫陽花の花が、病室に届けられた。


次は、梅雨明け頃に…また花が届くだろう。


色鮮やかな紫陽花を眺めていると、

何故か?妙に、紫陽花の花の事を

詳しく知りたくなった。




「調べてみるか。

時間は、まだありそうだしな。」



・紫陽花は様々な色の種類がある。

・そして、色によって花言葉も違う。



「ふむ。次は…


 花言葉など…。」



・heartlessness(冷酷)

・boastfulness(高慢)

・You are cold(あなたは冷たい人)




「ふん、

こんなものが、届けられるとはな。」



『御生憎様だね。』



老人は、憤慨して…

それ以上、調べるのをやめた。



「しっかしお前さんも、

気の毒な言葉がついたもんだよ。」



いつしか、老人は紫陽花の花に話しかける様になっていた。



「やぁ、お前さん。今日は、久しぶりに

いい天気になったよ!」


「今から、新しい御水をやるからな。」


「お前さんは、晴れの日も好きだろう。」



新鮮な水に濡れた、紫陽花の葉が、

太陽の光で笑って見えた。



「そうかい。やっぱりご機嫌なもんだね。」


「私は、また少し横にならせてもらうよ。」


「また、次に目が覚めたらば

新しい水をやるから。待っていなさいよ。」


『おやすみ。』



老人は、深い眠りに就いた。


暖かく、柔らかい風が頬を撫でる。



「誰だい?悪戯はやめておくれ。

薄ら目を開けながら、続けて… 


私は、今しがた床に就いたばかりでなぁ

休ませておくれよ。」と言った。




キラキラと眩しい光を見ながらも、

再び目を閉じた。



ヒュー。

ヒュゥー。冷たい風が老人の身体を刺す。


老人は、寒さで目が覚めた。


ガタガタと、音を立てて、

丁度、夜の食事が運ばれて来た。


「おっと、いけない。

お前さんに、お水をやるんだった。」


「もう随分と乾いているかい?」


「すぐに、とりかかるからな。」


いつも無口な老人が、

紫陽花に話しかける様子を見て、

看護婦は、驚いた顔で私を見た。


『これは、約束なんだよ。』

と、呟く様に言った。


看護婦が去るのを見て、

急いで水を取り替えてやった。


『ありがとう


「今、何か言ったかい?」


シーン。と静まり返る病室に、

耳を傾けた。


「まっ。礼なんて、良いんだよ。」


老人は笑みを浮かべ、

照れ臭そうに、紫陽花を見た。


「さぁ、頂くとしましょう。」

いつもより、食事が美味しいと感じた。


いつしか、水やりが

老人の生きがいに、なっていた。


「お前さんは、不思議だね。

今までのどの花よりも、綺麗だよ


『ありがとう


「お前さん‼️」


「やっぱり…ありがとう。を

  言えるんだね。」



「そりゃあ、立派なもんだよ!」


「さすが、

私が目にかけただけの事はある。」



「そうかい。そうかい。」


「うんと、長生きして、

綺麗に咲いて、いておくれ。」



そしてまた、老人は深い眠りに就いた。




✽・:..。o¢o。..:・✽・:..。o¢o。..:・✽



☆『 老人と花 〜掌編小説⁉︎②☆へ


つづく✩.*˚


ランジュ敦子


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ランジュ 敦子


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