LDのタイプ

 

LDには、主に5つのタイプがあり、さらに複数の傾向を併せ持つ方もいます。それぞれのタイプについて解説していきます。

 

タイプ1「読み、書き、算数が上手くいかない。」

 

LDのタイプの中で中核を占めるタイプであり、医学的な「学習障害」はこのタイプに分類されています。

<具体的な困難>

  • 漢字が正確に書けない。

 ひらがな、カタカナはついていけても、画数が多く、複雑な漢字は苦手です。

 

  • 音読み、訓読みが苦手。

 1つの漢字が複数の読みを持っている時、どう読むのか、すぐに判断することが出来ません。

 

  • 音と文字の繋がりが苦手。

 例えば、「がくしゅう」という字が「GAKUSHU」と読むことを示す記号であることが頭の中に入ってきません。

 

  • 表記上のルールを守れない

 「っ、ゃ、ょ」等の小さな文字を正しく発音できないため、飛ばして読むことがあります。また、書く時も正しい位置に

 書けません。

  • 文の繋がりを区切れない
 「散歩に行く」という文を「さんぽ / に / いく」と区切って読むことが出来ません。文の意味を理解できないため、1字ずつ
読む「逐次読み」をします。
 
  • 時計が読めない
他の科目が出来ていても時計が読めない事があります。日常生活では遅刻などのトラブルに繋がります。
 
タイプ2「言葉の使い方、聞き取り方に偏りがある。」
 
 言葉の問題には、聞く・話す能力の偏りだけでなく、会話を進める能力つまり、相手の表情や言語外の含みを読み取る能力も含まれます。言葉を理解し、話す力があっても会話を進める力が無いと言葉を使いこなしているとは言えないです。
 コミュニケーションに問題がある場合には、言葉の問題として見えにくいため見過ごされてしまう事があります。
 
<具体的な困難>
 
聞く・話すときの困難
  • 聞き取るのが苦手
 話を聞く時に、注意がそれやすく集中力が続かないため、話が頭に入りにくいです。
  • 話すのが苦手
 スムーズに話せない。指示語の多用。言葉は理解できても話をまとめる力がない。正しく発音できない等の原因があります。
  • 記憶や筋身を立てるのが苦手
聞きたいことをすぐに忘れる。相手の話したことを頭にとどめておけない、理解しきれない等の原因があります。自分の考えを
整理するまでに時間がかかり、焦って上手く話せなくなります。
 
会話を進めるときの困難
  • 反語やダジャレ、からかいが分かりにくい
 含みのある表現を読み取ることが苦手です。
  • 話題が飛ぶ・話したい事しか話さない
 相手がその話題に関心があるか、楽しんでいるかという事には無頓着です。
  • 相手の返事にあまり注意を払わない
 相手が返事をしたり、意見を述べても、それを会話の中に組み込んで話していくことが苦手です。
  • 雰囲気や表情が読めない
 その場の雰囲気や相手の表情を察して会話を上手く操作することが出来ません。

 

タイプ3「友達同士でのルールが理解できない、守れない。」

 

 社会性のトラブルは、LDの定義には含まれません。しかし、学力のつまずきから気持ちが不安定になったり、社会性を学ぶのに時間がかかるなどの問題が二次的に起きます。

 

<具体的な困難>

 

  • ケンカが起こりやすい

ADHDを合併している子供に多く、友達同士の遊びのルール・マナーを頭では理解しているにもかかわらず、ガマンできずに

ルールを破り、他の子供とケンカになりやすいです。

 

  • 適切な言葉遣いができない

本人に悪気はなくても、人の嫌がることを言ってしまったり、乱暴な言葉遣いをしたりします。

 

  • 他人と積極的にかかわらない・極端にマイペース

これはASDを合併している子供に多く、自分が興味のあることに熱心で人とのかかわりをあまり求めない子供もいます。

(過去を振り返ると、私はこのタイプだったと考えています。)

 

これらの困難が続くと友達が出来なくなり、人付き合いがうまくいかない状態になります。その結果、不登校などの2次的問題が起きる可能性があります。

 

タイプ4「運動が苦手で不器用」

 

LDの子供の中には、全身を協調させて動かすのが苦手な子供がいます。全身運動だけではなく、手先の運動にも、様々な特徴が現われます。

 

具体的な困難の説明の前に「運動」について説明します。ここで指している「運動」とは、スポーツの事だけではないです。体を動かすこと全般を指しています。つまり、「体を操作する能力」を指しています。

 

<具体的な困難>

  • 細かいものを作れない

 指先の作業が上手くいかない。靴ひもを結ぶ、服をたたむ等の日常的な動作が苦手になるため、将来的に家事が苦手に

 なります。

  • 基礎的な動作が遅くなる

 歩いたり走ったりするのが遅くなり、長時間同じ姿勢でいる事ができない子供もいます。

  • 字が下手

 文字を書くのに時間がかかったり、正確に書けなくなります。元々文字の理解に問題がなくても、書くのが遅いために、理解が

 遅れる事があります。

  • 運動が苦手

複雑な運動に限らず、全身を使う運動をする体育の授業が苦手になります。

 

これらの困難が継続すると・・・

  • 体を動かす遊びや団体競技に参加したいと思わなくなります。
 本人が苦手に感じるだけでなく、「Aくんがいるとゲームが上手くいかない」「Bちゃんがいると負けちゃうよ」と言われる
 ことで、参加したいと思わなくなります。
  • 勉強以外での達成感が得にくくなります。
 実技系の強化の達成感が得られなくなります。

 

その結果、自尊心や達成感を得る機会が少なくなります。

 

タイプ5「その場に適した行動がとれない。」

 

このパターンはASD、ADHDの併発がみられる方に多いパターンです。

主に多動性と寡動性の二つに大別されます。

 

<多動性における具体的な困難>

  • 少しの間もじっとしていられない
  • 次に何をするか予測できない

<寡動性における具体的な困難>

  • 動きがゆっくりで反応が鈍い
  • 無気力
このような困難に直面する理由として以下のことが考えられています。
  • 気分が変わりやすく不安定
 すぐにカッとなり、自分のしたいことを我慢出来ません。
  • しなければならないことに向ける注意力が弱い
 今自分がしていることや1つの対象に向ける注意力が弱く、集中が出来ません。
  • したことや自分なりのルールへの拘りが強い
 しなければならない事や人から言われたやり方に柔軟な対応が出来ず、「人の話を聞いていない」と  みられてしまいます。
  • 外から入る刺激を受けとる注意力が鋭い
 外からの刺激を捉えるセンサーが鋭いため、絶えず外界の音に反応してしまう。
 
治療が必要なケース
 
てんかんやチック障害がある場合も集中できないため、学習障害となってしまいます。
 
チックに関しては以下の記事を参考にしてください。
 
後日、てんかんに関する記事を作成する予定なので、今回は簡単に紹介します。
 
てんかんは脳の神経細胞の一部が異常に興奮するために、倒れたり、けいれん発作を起こす病気です。はっきりとした発作がなくても、脳波検査にて特徴的な脳波が判明し、てんかんと診断されることがあります。
はっきりとした発作が起きない場合、呼びかけに反応せず、けいれんも起こさず、ボーッとしている場合があります。
症状によって抗てんかん薬を用いた治療が行われます。
 
このように、LDにはいくつかのタイプがあります。LDという言葉を用いていますが、学習以外の場面で影響を受けており、その影響の原因は他の発達障害の可能性があります。
 
他の発達障害について知りたい場合は過去記事をご覧ください。
 
次回もLDについて紹介していきます。
 
参考文献
 
上野一彦. LD(学習障害)のすべてがわかる本 講談社. 2008.