・鳩山氏が政治資金虚偽記載問題で釈明会見 ~会見でさらに膨れ上がった黒い疑惑~
民主党の鳩山由紀夫代表は30日夕、国会内で記者会見し、政治資金収支報告書に記載の個人献金者が献金を否定したり、故人が含まれていた問題について、虚偽記載は2005~08年の4年間で約90人で193件、総額2177万8千円に上ると明らかにした。原資はすべて鳩山氏本人の資金で、不正なものは含まれていないと説明。「誠に申し訳ない。国民に深くおわびする」と陳謝した。
問題となったのは、鳩山氏の資金管理団体「友愛政経懇話会」。鳩山氏は経理を担当していた公設秘書を解雇。収支報告書は鳩山氏からの貸付金として修正した。会計責任者の政策担当秘書については「しかるべき処分をしたい」と述べた。
虚偽記載の理由に関し「経理担当者が私への個人献金があまりに少ないので『大変だ』と思ったようだ」と述べた。
鳩山氏の依頼でこの問題を調査した弁護士は、報告書で「事実は鳩山氏にも、会計責任者にも打ち明けられてない」と経理担当者の独断との見解を提示。記者会見では、政治資金規正法違反容疑での告発も検討していることを明らかにした。
鳩山氏は「説明責任を果たす中で代表の責務を果たしたい」と党代表続投の考えを表明。衆院選への影響については「なしとはしない。真剣に説明し、できるだけ最低限になるように努力したい」と述べた。
匿名献金が突出 鳩山代表、5年で2億3千万円:朝日
民主党の鳩山由紀夫代表の政治資金管理団体「友愛政経懇話会」の政治資金収支報告書で、5万円以下などの条件を満たす匿名の個人献金の総額が、03~07年の5年間で計2億3千万円に上り、国会議員のなかで突出して多いことがわかった。匿名の個人献金の処理についても、「故人献金」で今回問題になった公設秘書が担当したという。謝罪会見で記者が「5万円以下の匿名献金も一定額ある」と指摘すると、調査にあたった弁護士は「その部分は終わっていない。調査を続ける」と説明した。
政治資金規正法は、政治家の活動資金に透明性を持たせる観点から、献金者の氏名と献金額を収支報告書に記載することを義務づけている。ただし年間5万円以下、税の控除を受けないなどの条件を満たす小口の個人献金者は氏名や住所を記す必要がなく、「その他献金」として合計のみを記載すればよいとしている。
修正前の03~07年の収支報告書によると、鳩山氏が集める個人献金は年間約5千万~1億1千万円で、与野党の代表クラスの政治家の資金管理団体と比較しても抜きんでている。ここ5代の自民、民主党の総裁、代表経験者と比較しても(表参照)、総額で突出している。
さらに、鳩山氏の個人献金のうち、匿名の小口献金である「その他献金」は03年が約8千万円、04年約4600万円、05年約4千万円、06年約3700万円、07年約2800万円となっている。年平均で約4600万円は、他の総裁、代表経験者の平均約140万円を大きく上回る。03年は少なくとも1500人以上の匿名者からの小口献金があったことになる。
「その他献金」の扱いは法にのっとった処理であり、それ自体に問題はないが、今回の「故人献金」のように実際に献金したかどうか、第三者が直接確認することはできない。
鳩山氏は企業団体献金を禁止して個人献金を推進する立場。税額控除を強化するよう主張もしている。自らの場合は、税額控除の対象とならない匿名献金が多いという矛盾を抱えた格好だ。
政治資金報告書に、既に亡くなった故人の名前など、全く実態のない虚偽の記載が多数見つかった問題で鳩山氏本人が説明を行いましたが、全てを秘書の責任とし、資金自体は不正ではなかったと訳の分からない釈明に終わり、全容はわからぬままです。さらに、2億3千万という巨額にのぼる5万円以下の”匿名献金”については、全く説明がされておらず、民主党は「これで説明責任を果たした」と得意気な様子ですが、これでは説明責任を果たしたことに全くなっていません。
問題点を整理すると、政治資金報告書には個人の政治献金について、税額控除となる5万円以上の献金は献金元を明記する必要がありますが、5万円以下は匿名でも可能ということになっています。
まず、今回問題になったのが5万以上の献金について個人名が明記されていたにも関わらず、既に死んだ故人の名前や、全く献金をしていない人の名前が記載されていた問題ですが、虚偽記載が4年間で90人、2200万円と多い。鳩山氏は、これについて「自分は全く知らない。秘書が単独でやった」と述べていますが、虚偽記載された90人については、鳩山氏の個人的な知り合い等も多く、これらの人の住所氏名などの個人情報を秘書が単独で調べ上げたとは考えにくく、このあたりが全く説明されておりません。このままでは鳩山氏本人が秘書に個人情報を含めて指示を与えたと考えるのが自然でしょう。
そして、その原資は鳩山氏本人の資金ということですが、そういうことであればさらに疑惑が生まれています。「脱税目的ではないか」ということです。政治資金というものは非課税です。鳩山氏本人が所得申告を免れたい、怪しい出所のお金を持っていた。それを政治献金という形で他人から献金してもらったことにすれば、それは”政治資金”という名のクリーンなお金に生まれ変わる。さらに非課税というおまけ付きです。脱税目的でマネーロンダリングをしたのではないか。鳩山氏の説明ではこの疑念が全く払拭できません。
さらに、鳩山氏は秘書がこのようなことを行った理由について、「私への個人献金があまりに少ないのでやった」と訳の分からない説明を行っていますが、今回明るみに出た5万円以上の記名必須の個人献金のほかに、5万円以下の匿名枠に5年間で2億3千万という、国会議員の中では異常に突出した金額の個人献金がされているのです。2億3千万を単純に5万円で割ると、4600です。少なくとも、4600人から個人献金を受けていたことになります。これのどこが「私への個人献金が少ない」のでしょうか。つまりこの言い訳は完全に嘘ということになります。
嘘までついて、故人からの献金という虚偽記載をしなければいけなかった理由は。やはり脱税目的だったのか。そして、この2億3千万という巨額の献金は本当に4600人以上もの人が献金をしたのか。同様に出所が怪しいお金を虚偽記載したのではないか。疑惑は今回の会見で払拭されるどころか、膨れ上がるばかりです。
前述のように、この件に関して鳩山氏は全く説明責任を果たしていません。釈明の中で嘘までついているところを見ると、何か怪しい裏があると思わざるを得ません。もしかすると小沢氏以上に黒い何かが出るのではという可能性も否定できません。こんな人物が日本国の首相になろうとしているということを考えると恐ろしくなります。小沢氏が違法な政治資金問題(巨額収賄)で説明ができずに見苦しい会見を繰り返し、党の信頼が落ちたところでその信頼を回復するために、操り人形として表の顔を付け替えた民主党ですが、その付け替えた表の顔も同様に政治献金について大きな黒い疑惑が発覚しました。
鳩山氏は、本当に自分が無実無関係である(自分の政治団体であった時点で無実無関係ではないのですが)と言うのであれば、誰もが納得する説明責任を果たす必要があるでしょう。そうでなければ首相に挑戦する資格などはありません。
参考書籍:
政治献金―実態と論理 (岩波新書)
古賀 純一郎