・防衛省がテポドン迎撃を”検討??” ~MDシステムを今使わずしていつ使うのか~
テポドン迎撃を検討 防衛省、MDシステム初実戦:産経
北朝鮮が長距離弾道ミサイル「テポドン2号」の改良型を日本に向けて発射すれば、ミサイル防衛(MD)システムで迎撃する検討を防衛省が始めたことが26日、分かった。迎撃するのはイージス艦に搭載した海上配備型迎撃ミサイル(SM3)と地対空誘導弾パトリオット(PAC3)で、導入から初の運用となる。ただ、迎撃は重大な政治決断を伴うため、首相官邸などと慎重に調整を進める。政府は平成15年、米国が開発したMDシステムの導入を決定した。MDによる対処は2段構えで、まず海上自衛隊のイージス艦がSM3で大気圏外で弾道ミサイルを撃ち落とし、失敗した場合は航空自衛隊が地上で運用するPAC3で迎撃する。
海自はSM3を搭載したイージス艦として19年度に「こんごう」、20年度に「ちょうかい」を配備。空自も19年3月に入間基地(埼玉県)へPAC3を配備したのを皮切りに、昨年3月までに首都圏の4カ所に配備を終え、26日には岐阜基地にも配備した。
こんごうは19年12月に米ハワイ沖で発射試験に成功したが、ちょうかいは昨年11月、より難易度の高い試験に失敗。空自は昨年9月、米ニューメキシコ州でPAC3の初の発射試験を行い、模擬ミサイルの迎撃に成功している。
北朝鮮が18年7月にテポドン2号を含む弾道ミサイル7発を発射した際、自衛隊は迎撃システムを備えていなかった。こんごうとちょうかいの2隻も日本海と太平洋側に展開したものの、弾道ミサイルの探知・追尾だけが任務だった。
テポドン2号改良型の迎撃に踏み切る場合、MDシステム導入で自衛隊法に新たに規定した「弾道ミサイル等に対する破壊措置」を初適用することになる。
破壊措置には、(1)燃料注入など発射の兆候がある場合、防衛相が首相の承認を得て自衛隊の部隊に迎撃を命令(2)明確な兆候はないものの、ミサイル実験などへの警戒が必要な際、防衛相はイージス艦などを展開させておき、あらかじめ作成された「緊急対処要領」に沿って迎撃する-の2つの運用方式がある。
北朝鮮は24日、実験通信衛星「光明星2号」の打ち上げ準備を行っているとの談話を発表。人工衛星発射を“隠れみの”にテポドン2号改良型を発射してくる可能性が高いため、迎撃に向けた政治決断とともに、どちらの運用方式で迎撃を命じるかも今後の政府内の調整の焦点となる。
北朝鮮、テポドン発射準備加速 追跡用レーダー試験:北海道新聞
「テポドン2号」とみられる長距離弾道ミサイルの発射準備を、北朝鮮が加速させている模様だ。その動向に神経をとがらせる米国は、ミサイル防衛(MD)による迎撃を示唆するとともに、北朝鮮問題担当の特別代表が週明けに日本、韓国などを歴訪、北朝鮮へのけん制を強める。韓国の有力紙、朝鮮日報は二十七日、韓国政府筋の話として、日本海側の咸鏡北道舞水端里の発射施設で、北朝鮮がミサイル追跡用レーダーなどを試験稼働させ、車両や人の動きが活発だと報じた。
一九九八年、二〇〇六年のミサイル発射時も二、三週間前からレーダーが稼働していた。
また、聯合ニュースは同日、舞水端里の発射施設でミサイルの推進器部分の組み立て作業が始まったと報道。発射準備作業が「一-二週間でほぼ終了する」(韓国政府筋)との見方を伝えた。
発射準備中のミサイルは、射程が六千キロ程度のテポドン2号とみられるが、米西海岸にも到達しうる射程一万キロ以上の改良型である可能性もあるという。
このため、キーティング米太平洋軍司令官は二十六日、米ABCテレビの番組で「北朝鮮の弾道ミサイルを撃ち落とす準備は十分にできている」とMDによる対抗措置も示唆。北朝鮮問題担当特別代表のボスワース元駐韓大使も週明けに日中韓ロ四カ国を訪問、北朝鮮の包囲網を固めたい考えだ。
一方の北朝鮮側は強気だ。朝鮮中央通信によると、祖国統一平和委員会は二十六日、「われわれは制裁であれ迎撃であれ、あらゆる事態に備えている」と、重ねて発射の意向を表明。先週訪朝した中国の武大偉外務次官との会談で、北朝鮮の金桂冠外務次官が六カ国協議再開を希望したとも伝えられ、駆け引きは活発化している。
テポドンが日本に向けて発射されたらMDシステムを使って迎撃を”検討”する。何かおかしいと思った人が日本にどれくらいいるでしょうか。莫大な費用をかけて開発したMDシステムです。それは日本に向けて弾道ミサイルが発射されたときにそれを迎撃するために作られました。直接的な防衛効果はもちろん、”撃ってきても打ち落とされる可能性が高い”という意識を相手に与えることで、発射をためらわせる心理的効果もあります。所謂”抑止力”です。
ところが、今まさに弾道ミサイルが日本に向けて発射されようとしているときに、「使うかどうか慎重に検討したい」と言うのです。”慎重に検討”とはいったい何のつもりでしょうか。今使わなくていったいいつ使うのか。「北朝鮮がミサイルを撃ってきてもMDシステムを用いて全力でこれを迎撃する」なぜこの一言が言えないのか。この発言をすることで、北朝鮮へ対する抑止力になるばかりか、多くの国民に安心感を与えることになるはずです。何も、北朝鮮のミサイル基地を事前に空爆するというのではないのです。MDシステムで日本に降ってくるミサイルを打ち落として国民の命と財産を守るだけです。これを行うことに何の検討が必要だと言うのでしょう。何の問題もありません。
北朝鮮は今回はまだ本気ではないかもしれません。オバマ政権や日本に対する牽制球のつもりで、日本海、または日本をまたいで太平洋上に着弾して脅すつもりというだけかもしれません。しかし、事前にミサイルの着弾地点を知ることは不可能です。仮に今回は本気じゃないだろうから迎撃しないと決めたとして、実際は東京に着弾したとしたら?弾頭が核だったとしたら? 太平洋上に着弾させる予定だったが性能不足で日本列島に着弾したとしたら?そのときはもう手遅れです。数週間でミサイルが発射されるという情報が次々と入ってきているこの段階でのんびりと”慎重に検討”など、平和ボケにも程があります。
選択肢は”迎撃する”しかないのです。日本はMDシステムを持ってるが使われることがないと判断されたら抑止力としての効果も失われてしまうでしょう。麻生総理は一言「北朝鮮がミサイルを撃ってきてもMDシステムを用いて全力でこれを迎撃する」と強い態度で発言するべきです。この件で強い態度を内外に見せることで支持する人も増えるでしょう。とりあえず強い態度を見せる。それだけでも内外に対しての効果があるのです。もし、今回は検討の結果迎撃をしないなどという結論になったとしたら、私もさすがに支持することはできません。
参考書籍:
日本はすでに北朝鮮核ミサイル二〇〇基の射程下にある―金正日の核とミサイル問題の深層
矢野 義昭
ミリタリー選書 27 BMD〈弾道ミサイル防衛〉がわかる (ミリタリー選書)
金田 秀昭