・中国が日本のODAを報道するなど異例の好意的報道 ~中国の覇権主義は変わっていない~
中国メディアが最近、中国の経済発展における日本の貢献を積極的に評価している。これまでの日本報道と比べて異例ともいえる“好意的”な内容が多い。背景には日本重視路線を打ち出している胡錦濤政権への国内世論の反発をやわらげるとともに、対中感情が悪化している日本国民に対する配慮がありそうだ。
12月5日発行の共産党中央宣伝部の機関誌「半月談」は「1978年に鄧小平氏は日本から何を学んだのか」と題する記事を掲載した。同年10月の訪日で新幹線に初めて乗り、松下電器産業や新日本製鉄などを見学したトウ小平氏が日本の発展ぶりに大きな刺激を受けたことを詳しく紹介、「この経験は後の中国の近代化構想の中で大いに参考となったに違いない」と論評した。
また、23日付の中国紙「中国青年報」は「日本がなければ、改革・開放は大きく異なっていた」とするコラムの中で「1979年以来、日本は中国の最大の援助国となり、総額2000億元(約2兆6000億円)以上を提供し、中国が受け取った援助額全体の67%を占める」と紹介、「2002年までに日本は1万2000人の専門家を中国に派遣し、農村開発などの分野で大きな役割を果たした」と指摘した。北京紙「新京報」なども最近、同様の内容の記事を掲載している。
これまでの中国メディアの日本報道といえば、歴史認識や領土問題などで日本を批判し、旧日本兵の残虐行為を強調するものが目立ち、戦後の日本を客観的に伝える記事は少なかった。このため多くの中国人は中国の近代化に日本が資金面や技術面で大きな役割を果たしたことをまったく知らない。
偏った日本報道や愛国主義教育の結果、胡政権が推進する日本重視路線は国内世論から強い抵抗を受けているのが実情だ。
今回の日本報道の変化について、中国の日中問題専門家は「戦後の日中関係史に光を当てることで日本のよいところを伝え、若者の反日感情をやわらげる世論対策の意味がある」と指摘する。また、「中国が政府開発援助(ODA)に感謝していないことが日本世論の対中感情悪化の原因の一つになっているので、今回の一連の報道は日本の国民感情に対する配慮も込められている」と分析している。
中国のメディアが相次いで日本重視報道。得に今まで全く自国民に知らせていなかった、ODAなどの多額の経済・技術援助を報じる等、まさしく異例です。上記記事中にあるように、中国にとって日本は、徹底的に”悪”でなくてはならなかった。その為であれば、歴史の捏造や事実の隠蔽・歪曲。その手段は問われませんでした。それは一党独裁政権である中国共産党の存在を正当化させるために絶対必要な措置だったからです。
しかしながら、今それが少しずつ変わってきているようにも見えます。先日紹介した、南京事件記念館から捏造写真が3枚撤去されたのもその一つでしょう(一部ではこの報道を中国が否定したという情報もあるようですが、詳細がわかったらまた掲載します)
しかし、手放しで喜べることではありません。一方でこのようなニュースもあります
中国国防省の黄雪平・報道官は23日の記者会見で、空母の建造について、「空母は国家の総合力の表れだ。中国政府は各方面の要素を総合し、関係する問題を真剣に研究、考慮する」と述べ、本格的な検討に入ったことを初めて明らかにした。
黄報道官は、これに関連して、「中国領海の主権と権益を守ることは中国軍の神聖な職責だ」と強調した。
香港紙は、先に、中国が初の空母戦闘群の建造に着手していると伝えていた。
空母が完成すれば、この地域の軍事バランスは大きく変わるでしょう。中国が空母を持つ理由はただ一つ。その覇権主義のためです。中国の覇権主義は依然変わっていないのです。むしろその勢いは増していると言っても良いでしょう。
中国が親日的な報道を行ったり、歴史の捏造を訂正するような行動をしているからと言って、それは決して日本の為ではありません。中国共産党の維持、そして覇権主義の邁進に、今現在必要な措置であったからやむを得ずと捉えるのが正しいでしょう。手放しで喜び、警戒心を解くのはあまりにも危険であると思います。
急激な経済発展で中国国内は様々な問題を抱えています。そこに起きた世界同時不況は中国も大きな影響を受けています。日本は、中国の国内の動きを敏感に感じ取り、安易に一喜一憂することなく的確な対中分析・戦略立案を行う必要があります。
参考書籍
中国がたくらむ台湾・沖縄侵攻と日本支配
宮崎 正弘