・米国の没落後、日本は中国の属国となるのか? ~ポストアメリカの世界で日本が生き残る為には~
米国の没落により、日本は中国の天領になってしまうのか?『隷属国家・日本の岐路』著者・北野幸伯氏が自著を語る:ダイヤモンドオンライン
「お父さんは、アメリカ合衆国ジャパン州で生まれました。僕は、中華人民共和国小日本省で生まれました」世界を牛耳ってきた覇権国アメリカが、大変なことになっている。現在起こっている危機は、「住宅バブル崩壊」「サブプライム問題」等が原因といわれる。しかし、今回の危機は、これまでと根本的に異なっていることを知る必要がある。
そう、ドル体制が崩壊しつつあるのだ。アメリカが世界最大の経常赤字・財政赤字・対外債務国家であることはよく知られている。普通の国であればとっくに破産するところだが、アメリカは例外的に安定を保ってきた。その理由は、ドルが世界の基軸通貨(国際通貨・世界通貨)だからである。仮にドルが基軸通貨でなくなれば、アメリカは普通の赤字国同様、自国通貨の暴落、ハイパーインフレにみまわれ、没落するだろう。
「しかし、ドルにかわる通貨がないのだから、ドル体制は永遠なのでは?」
数年前まで世界中の人々がそう思ってきた。しかし、われわれ日本人が気づかないうちに、状況は大きく変化しているのだ。具体例を挙げよう。
1999年、欧州で共通通貨ユーロが導入された。ユーロの流通量は06年時点でドルをこえた。
2000年、フセインのイラクは、原油の決済通貨をドルからユーロにかえた。アメリカは03年、イラクを攻撃し、決済通貨をドルに戻す。しかし、ドル離れの動きは止まらなかった。
イランは07年末までに、原油の決済通貨をドルからユーロ・円にかえた。それでアメリカは、核兵器をすでに開発した北朝鮮にやさしく、核兵器をもたないイランに厳しい。
中東産油国がつくる湾岸協力会議(GCC)は、2010年までの通貨統合を目指している。ロシアのプーチン大統領は07年6月、「ルーブルを世界通貨にする」と宣言した、等々。これらはほんの一部で、ドル離れの例を挙げればキリがない。
世界的ドル離れの動きは、もはや止めることができない段階にきている。それで、国際的投資家ジョージ・ソロスは08年1月23日、ダボス会議で歴史的発言をした。「現在の危機は、ドルを国際通貨とする時代の終えんを意味する」
これらの事実を見ると、「アメリカの没落はもはや不可避である」という結論にならざるをえない。 「アメリカの覇権はつづくか?」と議論する時代は、もう過ぎ去った。今は、「アメリカ没落後にむけて、日本は何をするべきなのか?」を真剣に考える時なのだ。
日本は、中国の天領になるのか?
日本は戦後60年以上、平和を謳歌することができた。「日米安保」のおかげである。ソ連も中共も北朝鮮も、「後ろに最強のアメリカがいる」という一点で日本に手出しできなかった。しかし、アメリカが衰退し、「日本の面倒はもう見ません」と宣言すればどうなるだろうか? 「それでは、日本は自立して生きていきます」そうは問屋がおろさない。日本の政治家は、戦後60年間自分で何かを決めたことがない「依存体質」なのである。「アメリカが決めてくれないのなら、他の大国に決めてもらおう」となる可能性が極めて高い。そして、他の大国とは「中国」になるだろう。米国防総省によると、中国の軍事費は公式発表より3倍多い1400億ドル。これは日本の防衛費の約3倍。文句なしで世界第2の軍事大国である。さらに国内総生産(GDP)も、後2~3年で日本を超え2位に浮上することが確実視されている。つまり中国はすでに、アメリカに次ぐ超大国になっている。(残念ながら)中国はアメリカ没落後の覇権国家候補ナンバーワンなのだ。
今の日本には、二つの道がある。すなわち、「真の自立国家になる」、あるいは「中国の天領になる」。筆者は、日本が共産党の一党独裁国家中国の属国になることを容認できない。「なんとか日本を自立した国家にしなければならない」という思いから、本著の執筆を開始した。
日本が自立するために
では、どうすれば日本は自立できるのだろうか? 日本で「自立」というと、「憲法改正」ばかりが議論される。しかし、国家の自立は、防衛面ばかりでなく、トータルに考える必要がある。具体的には、経済・軍事・食糧・エネルギー・教育等々。本書では、以下のテーマを取り上げた。
第1章は、経済について。政府が推し進める「アメリカ型改革」で、日本は必ず滅びることを証明する。ではどうすればいいのか?
第2章では、「少子化問題を(3K)移民により解決しよう」とする愚かさを指摘する。3K移民の大量受け入れは、世界中で大問題になっている。これは「品格のない国」への超特急切符なのだ。
第3章では、外交と安全保障問題に触れる。なぜ日本はやればやるほど「損をする」「奪われる」外交ばかりしているのか?また、日本の脅威は具体的にどの国なのか? どう対処すればいいのかを考える。
第4章では、食糧とエネルギー問題について。食糧自由貿易論の矛盾を明らかにし、日本の食糧自給率を一気に高める秘策を提示する。さらに、日本のエネルギー自給率を将来100%まで高める可能性のある新エネルギーを紹介する。
第5章は、教育について。「自立した国」は、自立した人間が集まることによってつくることができる。そして、自立した人間をつくるのは教育なのだ。
第6章では、金融大国アメリカと世界の工場中国にはさまれた日本が進むべき道を提示する。世界はすでに、アメリカ一極体制から多極体制への移行期に入った。そして、移行期はいつも混乱の時代なのだ。
本書が、激動の時代を生き抜く日本人に役立つことを、心から願っている。そして、日本に明るい未来を。
週間ダイヤモンドのオンライン版の書籍紹介(著者の自著紹介)コーナーにておもしろいテーマの本が掲載されていましたので紹介します。アメリカの没落後、日本は何もしなければ中国の属国となってしまうであろうという前提のもと、どうしたらそれが防げるのか。日本は何をすべきかという点を語っています。
確かに、現在アメリカを発端とした世界的な経済混乱が起きようとしています。1ヶ月ほど前までは1ドル110円程度を付けていたのに、先週末は90円を付けました。円が異常に買われているという原因もありますが、1ヶ月程度でこれほどまでにドルの価値が下がっているのは異常な事態だと言えます。またアメリカの株式市場の下落も止まらず、筆者の言うアメリカの没落というのは今まさに現実味を帯びています。
しかし、これが必ずしもすぐにアメリカの世界的な求心力の失墜に直結するとは言い切れず、さらに中国は世界経済が後退すれば、中国自身の経済も後退するという資本主義経済の仕組みに既に組み込まれつつあり、アメリカの没落後、中国が代わって躍進するとも限りません。しかしながら、長期的に見れば世界がそのような勢力図に変わっていくという可能性は否定もできません。さらに、民主党が政権を取り、外国人参政権をはじめとした種々の親中政策がまかり通り、国策自体が中国寄りになればこの筆者の指摘もさらに現実性が増すでしょう。
私も、日本政府はポストアメリカの世界体制を加味した国家戦略を考え始める時期に来ていると思います。ただし、直ぐにアメリカを切り捨てるというわけではなく、基本路線は今のままに、アメリカの権威が失墜した後も、直ぐに中国に飲み込まれない体制を整えることが重要だと考えます。その着眼点として、筆者が指摘する、経済・少子化・外交・防衛・食料・エネルギー・教育という視点は的確だと思いますが(そもそも民主党政権になるなどして、”中国の属国歓迎”という国策にならない前提ですが)、これらは全て日本の弱点であり、これらを全て解決するには容易ならざる努力が必要になります。しかしどれも独立国家として必要な項目であり、全ての項目に対して明確なビジョンを持ちつつ、柱となる外交政策については断固たる姿勢をとり続けることがまずは大切だと考えます。
参考書籍:
隷属国家 日本の岐路―今度は中国の天領になるのか?北野 幸伯
