・中国の著名人が反日宣伝の停止を提言 ~言論・思想弾圧の中国から変化の兆しを見る~
【北京=平岩勇司】中国の作家、文学研究者として知られる葛紅兵氏が、中国各地の抗日戦争記念館の展示について「復讐心をあおる反日宣伝はやめるべきだ」とインターネットのブログで提言したところ、非難の書き込みが殺到し、葛氏が「遺憾の意」を表明する事態となった。
葛氏は十二日付のブログで、旧日本軍の残虐行為を伝える「大量の血なまぐさい写真」の展示に対し、「青少年の心を恨みでいっぱいにして、日本への『敵討ち』の意識を生み出す」と指摘。「戦争は全人類の悲劇だと教える内容にすべきだ」と呼びかけた。日本の超党派国会議員が「反日」写真の撤去を求める活動にも「中日友好の目的なら、道理に合ってないともいえない」と一定の理解を示した。
これに対し、ネット上では「記念館には『日本人民も戦争被害者だった』との説明もある」「軍国主義の恐ろしさを伝えることと『反日』は全く別物」と批判が集中。「侵略の事実を隠ぺいする日本の右翼勢力に共感するのか」との意見も出た。
葛氏は十九日、「私は歴史学者でなく、中日関係の成熟した学術的見解を持っていない。多くの読者の民族感情を傷つけた」としてブログから文書を削除。ただ、文章はネット上で次々と転載され、批判が続いている。
著名人が国内の反日政策を批判し弾圧される。一見よくある事件のように思えますが、中国においては珍しい光景です。中国よりも比較的言論の自由がある韓国においては、この手のニュースはたまに報道されており、当Blogでも何度か取り上げたことがあります。(参考過去記事→・ソウル大教授が「慰安婦強制動員、土地収奪はなかったと言明」 ~盲目的反日主義から脱せるのか~) 結局、盲目的反日主義から脱することのできない公や民間から大反論の結果謝罪などに追い込まれているのですが、中国における今回の事件も、結果的に韓国と同じパターンを辿っているとはいえ、著名人がそのような発言をしたということ自体に注目すべきです。韓国に比べ言論弾圧激しい中国においては、そのような発言すら今まではほとんどありませんでした。
韓国において同様のニュースが挙げられるときは、上記のソウル大の教授の発言のように、従軍慰安婦や土地収奪といった、自国が行っている”歴史の捏造”について学術的な見地からそれは正しくないと批判することが多いのに対して、今回の中国における葛紅兵氏の発言は、復讐心をあおる展示はやめるべきだ”と言っているだけです。決して、抗日戦争記念館などが歴史を捏造していることについて間違っているとは言っていないという点もポイントになります。何かが変わり始めているとしても、そのような考えが生まれ、またそこまでの発言が許されるレベルではないとも考えられます。
しかしながら、中国における反日教育は現在岐路に立ち始めているのかもしれません。中国国内で起きた数年前の反日暴動が、結果的に中国に不利な状況を招いたこと、さらに靖国問題や歴史問題についての日本へ対する恫喝外交が小泉政権以降あまり効果を成していないこと、さらにオリンピック開催などの国際社会への進出、さらに経済成長を維持する為の外国からの投資を煽る為にも行き過ぎた反日体制はマイナス要因としかなりえません。
一朝一夕に急に歴史の捏造を認め、親日的な政策を取るとは思えませんが、このような状況に立たされた中国において、これまでの言論・思想統制の結果反日一辺倒の状況から何か違う形を模索しており、それを垣間見せたのが今回のニュースかもしれません。
参考書籍:
日本を呪縛する「反日」歴史認識の大嘘
黄 文雄
中国を永久に黙らせる100問100答
渡部 昇一