・映画評「俺は、君のためにこそ死にに行く」 | アジアの真実

・映画評「俺は、君のためにこそ死にに行く」

俺は、君のためにこそ死ににいく [DVD]
岸惠子, 徳重聡, 窪塚洋介, 筒井道隆
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 映画:「俺は、君のためにこそ死にに行く 」を見てきましたのでレビューを書いてみたいと思います。内容は、特攻隊の基地があった知覧で、明日飛び立つ若者達に親身に接したトメさんと、特攻隊員達それぞれの心情を描いた映画です。(これから先は内容に触れるところもありますので、まだ見られていない方はご注意下さい)


 明日出撃することとなった隊員の押し殺した思い、見送る家族の心情、不本意にも帰ってきてしまった隊員の苦悩、朝鮮出身ながらも特攻隊に志願した隊員の心情、どれも実際にあったエピソードに基づいて描かれており、いくつものシーンで涙を誘います。私は、特攻機に乗り込む息子に「どうか、しっかりやってください。頼みます」と深々と頭を下げる父親のシーンに最も心を揺さぶられました。(このシーンは実在の黒木國雄少尉の話を元にしていると思われます。興味のある方は読んでみて下さい→「そして、人がいた:坂本光三郎」

ただ欲を言えば、2時間強の時間にいくつも話を盛り込みすぎた感があります。軍上層部の特攻隊への責任問題のくだり、戦後の長いエピソード、特に死んでいったはずの特攻隊員が生き残っているかもしれないというシーンなどはせっかくのこの映画のテーマをぼかしてしまい、物語の引き締めに悪影響を及ぼしているように思えます。


 この映画にはあまり政治的メッセージは含まれていません。戦争肯定も反戦のメッセージも直接的には盛り込まれていません。ただ、そういう時代があった。その時代に特攻隊という特殊な環境下で生き、死んでいった若者達の姿を、トメさんを中心に生々しく描いています。

 戦時中の軍隊という環境の中であっても屈託なく笑い、青春時代を生きている若者達。その姿は何も特別なものではありませんでした。トメさんをはじめとする、その若者達の周りの人たちも。戦時中は異常な時代であったと思う人も多いかもしれませんが、その時代の日本人達は、健全に、精一杯その時代を生き、そして精一杯に死んでいきました。もしかしたらある意味、当時の日本人たちは今の我々より、よほど健全に生きたのかもしれない。ふとそんなことさえ感じました。


 ちなみに、富屋食堂は記念館として復元されており、トメさんの家族の方が経営する富屋旅館は今でも実在しています 。私も機会があれば訪れてみたいと思います。


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参考書籍:
ホタル帰る―特攻隊員と母トメと娘礼子
赤羽 礼子
4794210604