牡丹灯篭 | 珊瑚と瑪瑙
あの日から
ぼくの時間は彼女とともにある
彼女は
黄昏時に
ぼくの元に訪れ
夜の刻を過ごし
東雲の頃に去ってゆく
陽の灯の下では
彼女と居られないが
ぼくはそんなことは厭わない
何故ならば
彼女の艶白い貌が
美しく映える
夜こそが
まこと
であり
昼の世界なんて
幻なのだから
遠方の知人に頼まれた
独居の兄の様子がおかしい
連絡がつかず
返信もない
近隣の市に住むあなたに
部屋を訪問して何事もないか確認して欲しい
と
私は部屋を訪れた
扉が僅かに開いていたので
覗き込んでみる
薄暗い室内では
男と
ひと揃いの白骨が
昏い灯りの下で差し向かい
囁き合っていた
私は
恐ろしくなって
逢魔ヶ刻の町を
後も見ず走り逃げた
あの男の
幸福そうな貌が
とても恐ろしかったことが
今も
頭から離れない

