皆様、おはようございます。
本日も、読者の皆様に心の安らぎをお届けするため、風雅なる雑談から始めさせていただきます。どうぞお付き合いくださいませ。
65歳の典明が亡き親友・康夫との“もしも”の温泉旅行を描いた、笑いと涙の物語です。
手紙の余白
函館の旅から戻った典明は、しばらく心がざわついていた。恵子との出会いは、康夫の記憶を鮮やかに蘇らせただけでなく、彼の人生にまだ知らないページがあることを教えてくれた。
「康夫、お前…俺に隠してたこと、けっこうあるな」
典明は、康夫の手紙の封筒をもう一度見つめた。中には手紙のほかに、もう一枚、折りたたまれた紙が入っていた。開くと、そこにはこう書かれていた。
もし、恵子さんに会うことがあったら、伝えてほしい。 あのとき、ありがとうって。 俺は、あの喫茶店で話したこと、今でも宝物だ。
典明は、胸が熱くなった。康夫は、恵子に何か特別な想いを抱いていたのかもしれない。だが、それを語ることなく、静かにしまい込んでいた。
「お前らしいな…照れ屋で、不器用で」
典明は、恵子に手紙を渡すべきか迷った。だが、康夫の“ありがとう”を伝えることが、自分の役目のような気がした。
数日後、典明は恵子に手紙を送った。康夫の言葉を添えて。
恵子さんへ 先日は、康夫の話を聞いてくださってありがとうございました。 彼が生前、あなたに感謝していたことを、どうしても伝えたくて。 彼の手紙の中に、あなたへの“ありがとう”がありました。 それだけでも、彼の人生は豊かだったと思います。
数日後、恵子から返事が届いた。
典明さんへ 康夫さんの“ありがとう”、確かに受け取りました。 あの頃、私は仕事に疲れていて、誰かと話すことが怖かった。 でも、康夫さんはいつも笑って、私の話を聞いてくれました。 その時間が、私を救ってくれたんです。 だから、私こそ“ありがとう”を言いたいです。
手紙を読み終えた典明は、静かに目を閉じた。康夫の人生は、彼の知らないところでも誰かを支えていた。自分が知っていた康夫は、ほんの一部だったのかもしれない。
「康夫、お前…やっぱりすごい奴だよ」
その夜、典明はノートを開き、新しい旅の計画を書き始めた。
次は九州。黒川温泉で康夫と泥パック。 途中で恵子さんにも会って、康夫の話をもっと聞く。 旅はまだ終わらない。康夫の人生を、もう少しだけ辿ってみたい。
ページの隅に、典明は小さくこう書いた。
湯けむりの向こうに、まだ見ぬ康夫がいる。
続く
さて、今日のカラオケは、水木一郎さんの「キャプテンハーロック」です。
水木一郎さんの力強い歌声によって歌われる「キャプテンハーロック」の主題歌には、主人公ハーロックの反骨精神と孤高の美学が鮮やかに表現されています。
「命を捨てて おれは生きる」という歌詞には、体制や常識に縛られることなく、自らの信念に従って生き抜く覚悟が込められています。これは、堕落した地球政府に背を向け、滅びゆく星をなおも守ろうとするハーロックの姿勢を象徴しています。
また、「宇宙の海は おれの海」「たったひとりで 戦うのだ」といった言葉には、誰にも迎合せず、孤独を恐れずに航海を続ける彼の美学が凝縮されています。孤独を悲しみではなく誇りとして受け入れ、自由と信念のために孤高を選び取る姿勢は、現代にも通じる普遍的な価値を感じさせます。
この主題歌は、単なるアニメのオープニングを超えて、キャプテン・ハーロックという人物の哲学を音楽として昇華させた作品であると言えるでしょう。水木一郎さんの歌唱によって、その精神はより深く、聴く者の心に響いてまいります。
よろしければ、どうぞご視聴ください。
ランプライト山鳥典明カバー
「たったひとりで戦う日々」(私事ですが...)
親友を見送ってから、まもなく二年の歳月が流れようとしています。彼とは小学校一年の頃に出会い、幾度か同じ学級で学びながら、自然と深い絆が育まれていきました。それ以来、五十年以上にわたる長きにわたり、何事も分かち合える無二の存在として、私の人生に寄り添ってくれました。
彼が旅立った直後、私は心身の均衡を崩し、今もなお薬の助けを借りながら日々を過ごしております。喪失の痛みは、時を経てもなお癒えることなく、静かに胸の奥に残り続けています。
幼き日々、私たちは「キャプテンハーロック」の世界に夢中になり、語り合った記憶が今も鮮明に蘇ります。彼は、ハーロックの盟友であり、アルカディア号の設計者として知られる「大山トチロー」に、どこか面影を重ねるような人物でした。そして私は、少々気恥ずかしくもありますが、自らを「ハーロック」に重ねていたものです...。
昭和の時代に響いたあの主題歌は、今も私の心に残り、彼との思い出をそっと呼び起こしてくれます。懐かしき旋律とともに、彼の面影は宇宙の彼方に漂いながら、私の人生の航海を静かに見守ってくれているように感じます。
