外気温が日ごとに上昇して夏日となり、脱水症状にならないように注意が必要な時節になってきました。そのためマイボトルを持ち歩いて水分補給し、PETボトルの飲料水などを安易に買わないように努めておられる方もあると思います。そのような人が増えてPETボトルに係る状況も変化しているのではと思い、「PETボトルリサイクル年次報告書2023」を調べてみました。

 この報告書はPETボトルを利用する中身メーカー6団体と、容器および樹脂メーカーの団体であるPETボトル協議会の7団体からなるPETボトルリサイクル推進協議会から、2001年以来毎年発行されています。

 

Ⅰ.清涼飲料用PETボトルの出荷本数は241億本と増加( 2004年度比1.63倍 )

 2022年度の清涼飲料用PETボトルの出荷本数は241億本となり、3R推進のための自主行動計画を定めて取り組みを開始した2004年度比で1.63倍になっている。1.2億の国民が一人当たり年間200本を消費している計算になる。下図のようにコロナ禍の外出自粛により少し落ち込んでいるが、再度増加傾向にある。マイボトル、Mymizu運動の効果が顕著でなく残念である。

清涼飲料用PETボトルの出荷本数と、その環境負荷(CO2排出量)の推移

 

 推進協議会は3R推進のため、2025年度にはPETボトル全体で25%以上の軽量化(2004年度比)を目標に設定している。2022年度は全体で27.6%の軽量化となり目標を達成した。

 PETボトルの軽量化をはじめとする省資源・省エネルギーの取り組みにより、出荷本数の増大に比べCO2排出量は抑制されている。

2022年度と基準年度(2004年度)との環境負荷(CO2排出量)比較

 Ⅱ.PETボトルの回収率、リサイクル率、有効利用率

 消費者から排出されるPETボトルには大別して2つの回収ルートがある。一つは容リ法に基づき市町村が回収するルートと、廃掃法に基づき事業者が回収するルート(自販機横の回収ボックス、コンビニ、スーパーなどの店頭回収、オフィス、工場、交通機関など)である。これらは資源として回収されリサイクルされる。一方可燃ごみ・不燃ごみに出されたものはごみ処理として焼却や埋め立てに回される。さらにこれらから漏れたものとして、ポイ捨てや台風などによって河川や海へ流出してしまうものがある。

 

PETボトルのリサイクルの流れ

 

〇 ルート別の回収率

前の図で回収率は94.4%だが市町村回収と事業系回収のルート別回収率を計算する。

 

 回収量は2つのルートでほぼ同量だが、事業系の正味PET回収量は大きく低下する。それだけ事業系の方にラベルやキャップ、中身などのPET以外の異物が多いということであろう。

 

〇 日本のPETボトルリサイクル率=86.9% 有効利用率=98.8%(?)

回収された正味のPETは併せて551千トン。リサイクル工程で44千トンの残渣がでて506千トンがリサイクルされ、リサイクル率は86.9%となる。506千トンの内414千トン(81.8%)が国内でリサイクルされ、92千トン(18.2%)が輸出されている。

 

 疑問が残るのが有効利用率で、可燃ごみ・不燃ごみに混入したPETボトル量を32千トン(5.5%)と計算で求め、ポイ捨てや台風・災害による流失を極めて少量と推定している。そして26千トン分を焼却・熱回収して有効利用率に加算している。しかし昨今のごみ回収は分別回収が進み、家庭ごみへの混入や事業系の可燃・不燃ごみに混入するPETボトルは少ないのではないだろうか?ごみを焼却して熱回収される分の26千トン(4.5%)分は、ほとんどがポイ捨てなどの散乱ごみに入れば、有効利用率は98.8%から94.3%に低下する。

 

〇 外国のリサイクル率 欧州=42.7%(2021年年度) 米国=18.0%(2020年度)

  日本のリサイクル率は86.9%で2013年から大幅な増減がなく、頭打ちに見える。

 欧州の42.7%、米国の18.0%に比較するとかなりの高率ではあるが。

 

(出所)欧州:Wood Mackenzie社(2018年調査方法の精査修正)  米国:NAPCOR

 2017年のヨーロッパにおけるリサイクル率のトップはドイツの95%、2位はリトアニアとフィンランドの92%、3位はノルウェーで88%、4位はデンマーク、クロアチア、エストニアで86%である。 これらの国にはデポジット制があり、日本のリサイクル率と同等以上である。

  フランスにはノルウェーやドイツのようなデポジット機能はなく、ごみの分類等はされているが日本のようなペットボトル専用のごみ箱の設置は稀で、ビニールごみと一緒に捨てられている。したがって欧州全体では42.7%のリサイクル率しか出ていないと考えられる。

   アメリカでは人口の多くが広大な国土に分散して住んでいて、ごみは収集場所まで持ち込む必要もあり分別収集が定着していない。PETボトルのリサイクル率も低いままで、むしろ下がりつつあるようだ。

 

 〇 おわりに

   日本における清涼飲料用PETボトル使用量は増加し続けており、残念ながらマイボトル運動や給水スポットを増やす運動などの成果が目に見えては現れていない。

しかしかりに241億本の清涼飲料水PETボトルの、1%分がポイ捨てされたとすると2.41億本となる。1本20cmの長さと仮定すると総延長で4万8200kmにもなり、地球を1.2周してしまう。ポイ捨てを減らしリサイクル率を86.9%から、ドイツの95%やリトアニアとフィンランドの92%に近づけるには、やはりデポジット制を導入する必要があるのではないだろうか。

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